ポストトゥデイ・オンライン版は、「県行政機構(オーボーチョー)長選挙はNCPOの勢力確認のゲーム」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
国政選挙に先立って地方選挙が実施されるとの明確なサインが見られる。その時期が年内であるのかどうかは、様々な方面の準備状況とNCPOがいつ実施することを望むか次第である。ひとまず、ウィサヌ副首相は、年内に実施されるかどうか分からないと半々の可能性を示唆している。同副首相は、地方選挙関連6法案の進捗状況は、90%まで来ており、検討作業を行っているが、定数や就任要件、欠格要件、選出方法に関して、下院選挙制度と一致させるために多くの箇所の修正を要すると説明している。地方選挙関連6法案は、法制委員会での検討を終えた後、6月中に閣議に諮り、承認を得てから国家立法議会(NLA)に送付されて、7月~9月の期間に審議されて承認されれば、国王上奏の手続きに送られることになる。
「地方選挙に関して、バンコク都知事選挙を先に実施するかどうかは分からない」とウィサヌ副首相は述べている。これは、「政治活動解禁」の条件と一致した動きである。先週、政府と選挙管理委員会(EC)、憲法起草委員会(CDC)は、合同会議を開催し、その結論として、首相に4項目の提案を行ったが、それは、政治活動の解禁は段階を踏んで行うべきというものであった。地方選挙の立候補は、政党に所属する必要はなく、個人の資格で行われるものであり、政党の会議を開催する必要もないため、政党活動の解禁が行われなくても、直接的には地方選挙に影響を与えない。
6月末に総選挙実施に向けた政権と各政党による協議が開催される予定であり、プラユット首相は、プラウィット副首相兼国防相にその会議の議長を委任しているが、一部の政党から協議に参加しないことが表明されている。その協議は、法的にいつ実施なければならないと定められたものでなく、後日に総選挙実施を延期したくなった際の口実に使うことも出来るので、協議が延期になる可能性もある。これが地方選挙との相違点である。地方選挙は、法律が整い、NCPOから青信号が出されれば、いつでも実施が可能である。特に現在の状況は、地方自治体首長が全県で徐々に任期満了を迎えており、NCPO命令によって暫定首長としての職務を果たすだけとなっている。
国政選挙の前に地方選挙を実施することは、NCPOへの圧力を減らすことにもつながる。今後、国政選挙実施の時期が様々な制約により予定よりも1、2ヶ月程度延期となっても、少なくともNCPO政権は、選挙を実施する意志があることを示すことが出来る。たとえ実施される選挙が地方選挙であろうと何も動きがないよりは良いことである。NCPOの視点からの地方選挙の重要性は、「人気チェック」(タイ語:ワット・クラセー)をし、併せて、各地でどの程度NCPOが強いのか、またNCPOの期待に応えてくれるのかを図るためである。
2018年第6号首相命令による4人の県行政機構(オーボーチョー)長の停職解除による職務復帰もこれらの動きに一致したものである。この復職は、各地で活動を開始した親NCPO政党のための政治基盤になるように促す動きであると見られている。停職処分から復職した4人の県行政機構長は、サティラポン・ナークスック・ヤソ-トン県行政機構長(東北部)、マライラック・トーンパー・ムクダハン県行政機構長(東北部)、ブンルート・ブラヌパコン・チェンマイ県行政機構長(北部)、チャイモンコン・チャイヤロップ・サコンナコン県行政機構長(東北部)であり、これら4人とも政治的に重要な地域に居る人物達である。この復職の動きには、バーンリムナム派政治グループ幹部であり、官民協力(パラン・プラチャーラット)党に元議員を吸引し、同党の結集に大きな役割を果たしている核となっているスチャート・タンチャルーン氏による調整があった噂されている。同氏こそが(官民協力党)チームを強化するために各地で県行政機構長を勧誘するゲームを進めている人物である。
地方選挙は、各地における準備状況の確認のための類例として、国政選挙の前に実施される。混乱が生じるリスクがあるのか、暴力的な事態が将来発生するかどうかの確認のためだけでなく、地方選挙の結果は各地において(NCPOが)どの程度の人気度と強靱さを有しているかを示す指標である。どこの地域が弱点なのか把握し、各地の候補者を変更する必要性を認識させることになるので、それが国政選挙の準備に向けたNCPOの戦略に反映されることになるだろう。大政党の地盤、特に長年に亘って強靱な地盤を維持している一部の地域では、(官民協力党への)吸引が成功しないのであれば、(引き抜く代わりに)依拠している政治地盤を(弱める方向に)変化させることになるだろう。その間に、NCPO政権は、様々なプログラムを通じて各地に予算を注入し、併せて各県へ視察訪問し、移動閣議を開催することで各地での支持を集めようしている。