ポストトゥデイ・オンライン版は、「タクシンが激しく動くとタイ貢献党が攻撃を受ける」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
20年間に亘って、タクシン・シナワット元首相は、政治的な影響力を有する主要な人物の一人であり、政治生活で培ってきたカリスマ性を有している。タイ愛国党時代からその後継であるタイ貢献党に至るまで、一度も選挙で敗北したことがないという実績によって、タイ貢献党を他の政党よりも重要な立場に置かせている。タクシン元首相の一挙手一投足に各方面からの注目が集まるのは不思議なことではない。この4年間、タクシン元首相がNCPOに反応して政治的な意見表明をしたことは、あまり多くはないことは興味深い点である。ロビイストを雇ってNCPOへ攻撃をさせているとNCPOから批判されたことに反論した事例くらいであろう。その話題が静まって以降、タクシン元首相は長い間静かに過ごしていた。
タイが選挙モードに入ろうとしていることで、タクシン元首相に重要な動きが見られるようになってきた。それはBBCのインタビューを通じて、タイ貢献党が選挙に確実に勝利すると表明したことである。「国民を軽く見ない方が良い。今日、多くは仏教徒であるタイ国民は、我慢、忍耐をして、静かに平常に過ごしながら、時が来るのを待っているのである。いつか、その清廉な力を見せつける時がやってくる。その時に我々は何がどうなるのか知るのである。男であれば、不正はすべきではない。とりわけ、あの軍人国家の男は、不正な選挙を考えるべきでない。それは誰かに恥じることでは無く、自分自身に恥じることである」とタクシン元首相は述べた。
今回のタクシン元首相の発言は、以下のような2つの重要な意味があった。第1にタイ貢献党の「流血」を止めることを望んだのである。官民協力(パラン・プラチャーラット)党がスリヤ・ジュンルンルアンキット(元運輸相)、ソムサック・テープスティン(元副首相)を通じて、議員引き抜き活動を活発化させており、その結果、東北部のタイ貢献党所属元議員がタイ貢献党からの離党を促されているからである。多くの所属議員は、タイ貢献党内部での次期総選挙に向けた党首選出や「大ボス」(タイ語:ナイヤイ)であるタクシン元首相がタイ貢献党を継続して支援するのかどうか、それらの内部状況が不透明なことに動揺していたのであった。だからタクシン元首相がBBCを通じて、タイ貢献党に対し未だに同元首相が支援しているとの合図を発出したのであった。
第2に、プラユット首相兼NCPO議長の英国、フランス首脳との会談が予定されている欧州訪問に先だち、足を蹴って、折ってしまおうとの意図があったことである。プラユット首相は会談で選挙日程を明確にし、メディアからの注目を集めて、大きく報じられることを期待していたのに、同時期にタクシン元首相のBBCインタビューが報じられたことで、注目を奪われて普通の報じられ方になった。プラユット首相に多少の恥をかかせたことになる。
今回のタクシン元首相による動き、特にタイ貢献党が選挙に勝利するとの発言は、タイ貢献党にも影響を与えることになった。先日、選挙管理委員会(EC)は、今回のタクシン元首相の発言に関して、タイ貢献党が党員ではない外部の人物によって支配されている状態にあるかどうかの調査を開始した。もし、それに該当すれば、2017年政党法の規定により、タイ貢献党に解党処分が下される可能性がある。「政党は、直接的であれ、間接的であれ、党員ではない外部の人物に管理、支配、指示を受け、政党及び党員の自由を損ねて党活動をしてはらない」と第28条に規定されており、違反となれば、政党解党処分が下される。
まだ選挙の季節は完全には到来していないにもかかわらず、タイ貢献党は、スタート時点から既に違反行為の検挙が予約されたのである。タイ貢献党の一挙手一投足が敵陣営からの政治的な標的とされたに等しいのである。引っかけるために掘られていた何かの法律の穴に落ちることがあれば、タイ貢献党は、即時に「ツケの支払い」(タイ語:チェックビン)を迫られるのである。従って、タクシン元首相がタイ貢献党を応援し、政治の舞台で闘っていることを表明することは、タイ貢献党にとって、損と得の両方の効果がある。今後、タイ貢献党が切り抜けられるのか注目しなければならない。