ポストトゥデイ・オンライン版は、「ポムの親分が軍政党設立の人気を測るために石を投げた」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 「ポム親分」ことプラウィット副首相兼国防大臣がNCPOの政党を設立する計画をある程度肯定するかのような以下のような発言を述べ始めたことで、社会から注目を集めるホットイシューに再びなろうとしている。「NCPOは政治に関与しない。しかし、もし必要となれば、(政党を)設立しなければならない。もし必要なければ、設立する必要はない」。この報道が賑わっている間にソンクロット・ティプラット陸軍少将の動きが現れた。同少将は、NCPOによる国家改革準備チームメンバーであり、その人物が「タイ国家の力(パックパランチャートタイ)党」の設立準備をしているのであり、その政党がNCPOの代理(ノミニー)政党かもしれないと見られているのである。

 二ピット・イントラソムバット民主党副党首は、「タイ国家の力党」のメンバーとされる人物が南部地方を訪問するようになって既に1年ほど経過しており、同党の連絡調整チームの拠点をパッタルン県に設置し、同県内の3つの小選挙区全てに下院議員候補者を擁立すべく準備をしており、他の南部の各県も同様の動きをしていると指摘する。

 プラウィット副首相兼国防大臣が「タイ国家の力党」設立の動きを承知していないと否定して見せても、「まだ政党を設立する必要はない」と否定して見せても、NCPO代理政党設立の疑いを全て払拭することはできないだろう。最近の政党設立の可能性をある程度肯定するかのような発言は、NCPOが社会から賛同を得られるかどうか世論を窺っているかのように思われる。重要なことは、現在活動を凍結させられて、政治活動を出来ずにいる各既存政党に所属する政治家達に向けてサインを送っていることである。

 現行憲法の規定(注:付属法の政党法)に従えば、各政党は、新たに党員制度を整えなければならず、その間に所属政党を容易に移動できる余地が残っていると考えられている。これは中規模政党から大規模政党に至るまで各政党が内部に抱える脆弱性を意味している。導入された新しいルールにより、各政党はヒステリーのような迷走に陥ることになり、より大きな混乱を招き、政党政治をより脆弱にさせることになる。その上にNCPOによる任命制の上院議員250人や国家改革委員会、国家戦略委員会などの現行憲法の規定に盛り込まれている「助っ人」(トゥアチュアイ)が含まれることになる。これら上記の全ての要因により、「部外者首相」が誕生する可能性がより強まりつつある。

 プラユット首相の続投支援を明示した政党設立の構想の表明が続いているが、現在までのところ、当の首相本人は、その構想を歓迎するのか拒否するのか反応を示そうとしていない。そのような動きは、パイブーン・ニティタワン元国家改革会議(NRC)議員から始まった。同氏が設立を予定している政党は、未だ党首を誰にするのかという「秘密の切り札」を明らかにしていないが、同氏は、未だに政党活動の解禁はされていないため、活動が影響を受けることを認めている。その次にステープ・トゥアクスバン元PDRC事務局長の動きがあった。同氏は、NCPOの運営の支援者であることを当初より明言し、民主党の立場と異なっても憲法草案(現憲法)の支持を表明した程であった。今回のNCPOによる将来の政党設立に含みを持たせるかのようなサインを送ってくるまで、これまで(NCPOは、)政党設立の可能性をずっと否定し続けていた。

 民主党とPDRCの間でのひび割れが生じてから、未だに両者の関係は、以前のように元通りに修復できずにいるようである。プラユット首相が憲法付属法を国家立法議会(NLA)に否決させる(ことにより総選挙実施時期を延期させるとの)噂を否定し、来年の総選挙実施を明確に宣言したことで、現在、NCPOによる政党設立構想が特別に注目されることになっている。さらにプラユット首相の人気という「変数」が、クーデター直後の頃とは真逆で、全ての分野において著しく低下傾向にあるという不安もある。

 この機会を捉えて、大幅な内閣を実施し、(総選挙実施までの)最終コーナーで急いで成果を出すことは、現在の最良の選択であろう。これまでにも、多くの分野で国民から気に入られる成果が出ていないだけでなく、NCPO内部の人々が不透明で怪しい事業に数多く関与していたことで、人気と信頼を低下させてきた。さらに草の根の人々への景気刺激策は、過去の政権政党が末期になって実施してきたこととほぼ相違がなくなっている。

 忘れてはならない教訓は、過去に権力継承を目指した全ての軍政党は、どのような理由を掲げていたとしても、最後にはあまり良くない終わり方をしてきたことである。プラウィット副首相兼国防大臣が「石を投げた」ことは、軍政党を設立すべきかどうかの決断をする前に熟慮していることを意味している。