マティチョンは、「ステープ・トゥアクスバンによる政党結成構想のやわらかな合図」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
ステープ・トゥアクスバンPDRC事務局長による突然の「必要がある場合には、(自らの)政党を結成する」との力強い意見は激震を与えるものであった。なぜならステープ氏は、「神通力」(リット)を持つ人物であるからである。単に以前に民主党の幹事長を経験したというだけではなく、自らが党首を首相就任にまで導いた「名幹事長」であったのである。このような芸当が出来る人物として、3人の名前を挙げることができるだろう。それは、タイ国民党幹事長時代の「バンハーン・シラパアーチャー」氏であり、それは、民主党幹事長時代の「サナン・カジョンプラサート陸軍少将」であり、そして、タイ国民党時代の「サノ・ティアントーン」氏である。それに対して、ステープ氏の神通力は、敵対勢力に激震を与えるのではなく、民主党を激震させるのである。
ひとまずアピシット・ウェーチャチワ民主党党首からの反応があったものの、まだハッキリとしたものではない。それは、ステープ氏の態度もハッキリとしたものではないからであろう。アピシット党首は、以下のように述べている。「現在のところ、民主党内には、誰も民主党から離れようという意志を表明した人物はいない。PDRCの多くの幹部でさえ民主党と一緒にやっていくことを確認している」。そして以下の言葉は、アピシット党首の懸念が反映されている。「懸念している。なぜなら地盤が重なるからである。もしステープ氏が新党を結成するのであれば、どのような目的で結成するのか聞かなければならない」。ここでの「地盤が重なる」との言葉こそが問題の本質なのである。もしステープ氏が民主党から独立して新党を結成すれば、バンコク都内の民主党の地盤を争って分け合うことになるだけでなく、少なくない南部の地盤を失うことにもなりかねない。それが政治上のセンシティブな問題である。
ステープ氏による新党設立の動きは、タイ貢献党でもなく、タイ国民発展党でもなく、タイ名誉党でもなく、チョンブリの力党などの他の政党ではなく、民主党こそを大きく激震させるのである。タイ貢献党の地盤は北部と東北部であり、タイ国民発展党の地盤は中部であり、タイ名誉党の地盤は東北部、中部の一部の県だけであり、チョンブリの力党の地盤はチョンブリ県だけである。ステープ氏の動きには、神通力があるといっても、民主党に対する神通力なのである。アピシット民主党党首の態度は、慌てる素振りを見せないように、哲学者のような冷静さを保つように特別に注意を払って、緩やかにステープ氏の本気度を測っている様子であった。
ステープ氏の態度は、(新党結成の)アピシット党首と民主党に対し、まるで「警告の合図」を送っているようであった。つまり、NCPOと一緒に、政権を支持していく意図と決意を伝えようとしていたのである。そして、プラユット首相の続投を支えることを促していたのである。これに対し、アピシット党首は、この合図を受け入れるのか否か、それが問題である。