マティチョン版は、インラック前首相の逃亡に関する評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 インラック前首相の逃亡の影響としてタイ貢献党、赤シャツの内部崩壊を導くとの評価がある。崩壊とは、2006年クーデター後に革命団が用意した4段階の計画に従って、タイ愛国党が分裂して国家貢献(プアペンディン)党、中道主義(マッチマーティパタイ)党が誕生したこと、(タイ愛国党の後継の)国民の力党からタイ名誉(プームチャイタイ)党が分裂して誕生したことと同じように再び分裂することである。もしNCPOがそのことに自信があるのであれば、直ちに2つの疑問が沸き上がってくる。それは、第1に、何故未だ政党の政治活動を解禁しないのか、第2に、何故未だに選挙日程の確定がなされないのかである。政党の政治活動禁止処分を解除してもタイ貢献党が毒にならないのであれば、解禁しない理由は何であるのか。選挙期間に突入してもタイ貢献党に勢いはなく、勝利の見込みがないのであれば、何故選挙日程を確定しないのであろうか。

 現在の状況を見れば、NCPOが政党に通常の政治活動を出来るように活動禁止処分を解除する気配はないことは明白である。政党役員会も開催できそうにない。それは民主党、タイ国民発展党、タイ名誉党、国家発展党にも当てはまり、同じ運命を辿っている。選挙の実施は、「ロードマップの通りに実施する」と語られるだけである。しかし実際のところ、二ピット・インタラソムバット民主党副党首が確信して指摘するように、2018年中に実施されるのか、2019年に延期されるのか、誰も確約をしないのであり、それが「選挙は実施されない」との気分を生じさせている。選挙の実施は、彼らに罰を与えるようなものである。その通りに選挙が実施されなければ、NCPOは、引き続き権力の座に留まり続けられることを意味する。

 インラック前首相の逃亡は、タイ貢献党の崩壊を導くことになるとの確信はあるものの、NCPOは、未だに選挙の自信を持てないでいる。少なくとも民主党が勝利できるとは信じていないし、タイ名誉党が民主党と調整して連立し、政治を運営できるとは信じていないのである。なぜなら依然としてタイ貢献党に勝機があるとみているからである。仮に依然としてタイ貢献党に勝機があるのであれば、いつ選挙は実施できるのであろうか。選挙が実施されれば、タイ貢献党に政治的な正統性を与えてしまうことになる。「選挙とは、パントゥラット(伝説上の鬼女)の金の泉」である。振り返ってみれば、2001年1月、2005年2月、2007年12月、2011年7月の全ての選挙は、全てタイ愛国党系の完全勝利に終わっている。要するに選挙の実施は、タイ貢献党にパントゥラットの金の泉を与え、即座に正統性を付与することになるのである。これがタイ社会の深層での恐怖である。

 インラック前首相の逃亡の当初は、反インラック派を大いに活気づけることになったが、しかし数日間だけでその活気は消えて静まりかえってしまった。その静けさの理由は、インラック前首相の逃亡は、準備もなく慌てて逃げ出したのではなく、戦略的に後退するという前もって準備してあった戦術を実行しただけに過ぎないとの疑念が生じているからである。