マティチョンは、「離別の季節の到来、河は支流に分かれ、権力は分裂する」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
2017年憲法が施行されてから、総選挙の実施に関心が集まっている。法律の規定に従おうと、どのような隠された政治的な意図、公表された意図があろうと、いずれにせよ「手続きの整備」を行って、総選挙とその後の状況に備えなければならない。一般的に「手続きの整備」は、どのようなものであろうと「気に入らない人」の方が「気に入った人」の方より多いものである。そのような感情を表す人々は、それなりに多い。総選挙の実施前の「手続きの整備」の大きな標的となっているものの一つが、選挙管理委員会(EC)である。
6月9日に国家立法議会(NLA)は、憲法付属EC法案の採決を予定している。今回の採決に関する問題は、同法案第70条に関わる問題である。NLAの同法案の検討委員会は、憲法起草委員会(CDC)が提案してきた同法案の原案とは大きく異なるような重要な修正をほどこした。原案では、現在のEC委員は、任期満了まで今後も引き続き職務を遂行するというものであったが、検討委員会の提案は、「セット・ゼロ」つまり、委員全員の総入れ替えを実施するというものであった。「同憲法付属法が施行される前から就任中のEC委員長とEC委員は、同憲法付属法が施行される日をもって失職するが、新しいEC委員長とEC委員が任命されて職務を開始するまで、執務を継続する」と明記された。このような圧力を加えれば、影響が様々に波及することになる。
(ECのセット・ゼロによって生じると)考えられる問題の一つとしては、総選挙の実施が延期になるかどうかである。新しいEC委員の選出には、(厳格な)「新しい資格要件」に合致していなければならず、(そのような人物を選出することは)容易なことではなく時間を要することになる。ECの「セット・ゼロ」を実施することの本当の意図は、現在の権力者の権力継承までの期間を引き延ばすためではないのかという疑問まで投げかけられている。無視できないようなホットイシューになっているにもかかわらず、プラユット首相兼NCPO議長は、記者からのインタビューを受けることを断り続け、書面でしか受け付けず、6月6日は代理でタクサダー首相府報道官補に以下のように発言させた。「どのような視点から見ているのか承知していないが、NCPOがどうやって権力継承をするというのだ。ECは選挙を実施することが職務であり、国民が投票の権利行使した結果である得票数をどうやって変更させるというのだ。ECであろうと誰であろうと、権力を継承させることは誰にもできない」。このような回答が疑わしいかどうか、今後の状況を見ていかなければならない。
次の疑問点は、ECに対して下される処分は、他の独立機関にも下されるのかどうかということである。さらに「5つの河」(注:軍政下の5つの組織であるNCPO、内閣、NLA、CDC、国家改革推進会議を示す)は、「セット・ゼロ」による総選挙実施と今後の政治状況に対応するために新しい権力構造の再構築をすることで了解が一致しているのであろうか。ミーチャイCDC委員長は、以下のように意見を述べている。「いくつかの組織はセット・ゼロになるが、いくつのか組織はセット・ゼロにはならない。それは理由次第である。ECの場合は、(EC委員の)選出委員会の中の一つの委員会が(現)EC委員が2017年憲法の要求する資格要件を満たしていないことを指摘するだけである。国家オンブズマン委員会に関しては、職権が同じままなので、何も問題がない。国家人権委員会の場合は、委員の選出に問題があり、(セット・ゼロ処分が下される可能性がある)理由があるので、どうするべきか考えなければいけない。」
現在のところ、NLAは、セット・ゼロの処分が下されるべきは、ECと国家オンブズマンだけであり、国家人権委員会は継続させ、国家汚職防止委員会(NACC)と憲法裁判所には、全く手出ししないという立場を明白にしている。