マティチョンは、「政治の激震、ステープのPDRCが民主党に影響を及ぼす」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 プラユット首相に首相の職を今後4-5年続けて欲しいと、ステープ・トゥアクスバンは、支援表明に等しい「個人」としての意見表明を行った。もし「個人」の意見表明であるなら、なぜ、それがニュースになるのかという疑問が生じる。もし「個人」の意見表明であるなら、なぜターウォン・セーニアム(元内務副大臣・PDRC幹部)が表に出てきて、ステープがそのように考える理由を説明したのかという疑問が生じる。もし「個人」の意見表明であるなら、なぜ一部の民主党員からの反応があったのかという疑問が生じる。民主党員の反応は、ターウォンと比較して(ステープ発言を)それほど重視しているようではないが、この反応は、ステープの意志によって、民主党が激震することになるという彼らの不安を反映したものである。そのため、アピシット党首は、自らが党を指導し、選挙に勝利して、首相の座は他の誰でもなく、アピシットのものであるとの自信を表明する必要が生じたのである。

 ステープによる意見表明は、それは「個人」のものであると同時にステープの政治的立場の表明でもある。従って、党幹事長まで経験した彼の意見表明は影響を与えることになるのである。党幹事長職は、政治上の戦術を策定する。2007年12月の総選挙で第1党になれなかった民主党の党首を2008年12月には首相に就任させた実績がある。1997年11月当時、サナン・カチョンプラサート陸軍少将が民主党幹事長として、チュアン・リークパイ党首を首相に就任させたのと同じである。従って、ステープの発言には、「重み」があるのである。広く政界に対して重みがあるいうだけでない。ステープは既に離党しており、民主党との関係はないことを表明していても、民主党内に深く影響を与えるのである。「人の評判、樹木の影」(注:中国の諺で「人には良きにつけ、悪しきにつけ、評判が付いて回る。それは樹木に必ず影が出来るようなものだ」)

 実際のところ、アピシット党首の意見表明は、PDRCの幹部達にとって問題はないものであり、彼らは、民主党に復帰する用意が出来ている。これは、民主党の方向性を明確に示している。2013年10月からのPDRCの役割は、2014年5月のクーデターに向けた方向性と条件を整えた重要なものであった。そのクーデターについて、タイ社会は、その意図と成果に疑念を持ち始めた。アピシット党首がステープのカリスマ性の下にあるPDRC幹部達の民主党復帰を容認しているということは、移行期の今後4-5年間はプラユット首相の続投を支持しているという真実の方向性を示している。民主党の政治問題は、鋭く尖ったものである。なぜなら、もしアピシット党首がステープの示した方向性を認めてしまえば、自分自身の役割と意味を否定し、NCPO、プラユット政権の一部として付属品扱いにされてしまうことに等しくなってしまうからである。

 もしNCPOによるクーデターと3年間の行政運営が目立った成果を上げていれば、プラユット首相の続投を支持表明したとしても問題は生じていなかったであろう。しかし、クーデターに関する疑問が生じ、より不信感が広がり、NCPO政権の成果についての疑問が生じ、より不透明感が広がっている。プラユットへの支持表明をすることは、通常よりも「疲れる」ことなのである。