タイラットは、「兄貴を捨てる準備が出来たのか?」と題したプラウィット副首相兼国防大臣に関する評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
「深く潜水」し、完全に静まりかえっていた。去る18日の閣議で承認されて、「メイドインチャイナ」の「ユアン級S26T」潜水艦が再び浮上してきた。しかし、この購入計画が報道されたのは、今週25日の閣議の直前であった。それに加えて、偶然にも「トゥー叔父さん(プラユット)」首相兼NCPO議長がバーレーンでの経済協力のための会議出席に向けて飛び去ったタイミングとも一致していた。この外遊に際して、プラユット首相は、「ポム兄貴」ことプラウィット副首相兼国防大臣に首相代行として権限委任し、閣議の議長代行を務めさせた。それは「別の目的」を任せたからである。
「ポム兄貴」が記者からの長時間のインタビューを受けて、購入の清廉潔白さ、潜水艦購入の必要性を説明している様子は、まるで宿題を終わらせる準備をしていたかのようであった。何故(潜水艦購入決定に関して)正式な記者会見がないのかという社会が疑念を抱いている点について、プラウィット副首相兼国防大臣は、「この書類は、戦略、戦術に関わる機密文書であり、公表する必要の無いものである。歴代の内閣も同じように公表していないものであり、不思議なことではない。どのような省庁、部局であろうと機密書類が存在するものである」と説明した。最後に「兄貴」は、潜水艦購入問題について説明を終わらせるため、他の話題へと誘導して行った。
プラウィットの状態から推測するに、このような状況になることを事前に準備していたようであり、今回の闘いに大きな賭をしていたのであろう。プラウィットがソンクラン休暇と称して長期休暇を願い出て、続けて14日間も記者の前から姿をくらまして、長時間のインタビューを受け付けないという奇妙な行動を取っていたことは、この状況を反映していたようである。回答の難しい質問を回避しながら、どうするか逡巡していたに等しい。
しかし、それでも逃げ切れなかった。潜水艦購入計画は、社会の注目から逃れられない標的にされており、NCPOによる軍事政権が「机を叩き」、決断すると予想されていた。批判など気にしない。当然購入にするに決まっていた。そして「兄貴」は、増しつつある圧力から逃げられなくなっており、「爆撃対象地」と化して、不注意によって政治状況を変えてしまいかねない要因を拡大させた。さらに内閣改造の噂が溢れるようになってきた。
特にPAD(黄シャツ)グループのメディアは、最近、「兄貴」を含め、ジャクティップ警察長官が「兄貴」の後任候補であると名指しして、彼らを「治安関係ネットワーク」として一括りにして纏めて切り捨てようと躍起になっている。PADのネットワークと「テウェート地区の家」(当館注:プレム枢密院議長公邸を指す)に近い筋のグループは、最も成熟した「兄貴」を削ぎ落とし、絶対に失墜させようと、そのために全力で取り組んでいる。しかし、この動きは、一方だけのものに過ぎない。外部の状態はその通りかもしれないが、NCPO政権の権力内部には、また別の事情がある。内部にとっては、「兄貴」は、問題が生じても、メディアからの話題を全て片付けてくれるのである。プラウィットは、困難な問題に生じた時も、プラユット首相への攻撃を回避させるための緩衝材となり、前面で全てを引き受けて、激しい衝突に耐えてくれるのである。まるで、主役を引き立てるために背後にいる悪役となることを認めているようなものである。
「兄貴」は、首相から70案件以上の経済、社会、治安関係の委員会の委員長を委任され、数多くの事業を推進している重要な役割も担っている。「思い通りに進む船」(ルアペッ)の操縦を司る主要な歯車となっている。当初よりNCPO政権は、「ビックブラザー」のカリスマ性が背後にあって運営されていたことは否定できない。内閣改造の噂が出ていることで、大きなクエスチョンマークが生じている。それは、プラユット首相は、「兄貴」を切り捨てる準備はどれだけ出来ているのだろうかということである。