ポストトゥデイ・オンライン版は、「エネルギー政策、政府の弱点」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
エネルギー政策は、未だ問題が解決できず、NCPO政権の「弱点」になろうとしている。関係者の全てが納得するような、対立を解消する妥協点を探すことは困難である。その結果、推進しようとしている各事業は、推進することができず、それどころか撤回すれば、損害を発生させるか、機会を喪失する可能性もある。長期的課題についても全て中途半端な状態のままとなっている。重要なことは、これらがデリケートな問題であり、最終的に対立を招く可能性があることである。
最初の問題は、クラビ県での石炭発電所建設計画事業である。地元の人々、NGO、学者、そして政治家などの各方面からの全力で反対する強硬な声に直面し、最終的に政府は、仕方なく、新しい基準を適用することを認めるまで事業を後退させることになった。その結果、環境影響評価(EIA)段階にまで手続きを戻し、環境健康影響評価(EHIA)を新たに実施することになった。発電所建設計画の推進は、当然ながら、未だ継続している。エネルギー安全保障の理由から、増加し続ける電力需要を賄うために新たなエネルギーを探し続ける必要があるからである。
NCPOがチャルームチャイ陸軍司令官・NCPO事務局長を委員長とし、ほとんどの委員を軍人で構成する「南部電力状況に関する知識形成・理解促進・意見聴取委員会」を設置する命令を発出したことで、この問題の新たな対立のサインが見え始めている。同委員会は、南部の電力状況への理解を促進し、関係者からの意見を聴取するための公聴会をスラタニ県、クラビ県、ソンクラ-県の3カ所で開始した。軍人がホストする公聴会のスタイルでは、各方面から意見を聴取するのではなく、最初から既に決めてあることを結論づけるだけになると懸念する声が上がっている。
こうした懸念は、クライサック・チュンハワン元議員の意見と一致する。クライサック元議員は、政府が南部でのエネルギー問題に関し、地元の人々の生活と観光業に影響を与えず、エネルギー施設とコミュニティーを共存させるために、地元の人々の意見を聞かなければならないと主張し、以下のように述べた。「NCPOは、軍人では無く、中立的で、広く認められているエネルギー分野の学識者を委員に任命すべきである。軍人には、国民の参加プロセスが理解できるかどうか分からないからである。今後も幅広い意見を聴取することもせず、事業を推進しようとするならば、それが第2回目の危機に直面させる原因になると信じている。」
この問題の出口は、石炭発電所を「建設する」か「建設しない」という二択だけではない。投資費用だけに拘って石炭発電所に固執するのではなく、天然ガス発電所を建設することや各種の再生可能エネルギーによる発電所を建設するという次元での解決策もあるはずである。仮に政府がこの方針に固執するならば、その先の過程で対立と暴力に直面することから逃れることはできないだろう。
同様の問題として、これまでのホットイシューである石油関連法2法案(石油法改正法と石油売上税改正法)についても3月30日に国家立法議会(NLA)で第2読会、第3読会の審議が予定されている。「エネルギー改革国民ネットワーク」が、NLAでの法案審議が開始された当初から反対を表明してきたが、その動きを止めさせることはほぼ出来なかった。最終的にNLAは、同法案を第1読会で可決し、その後、委員会レベルで何度も期限を延長しながら法案の詳細について検討してきた。しかし、NLAは、評価を誤っていた。反対派の力は衰えていなかった。特に「国家エネルギー社」の設置の問題については、これまで合意の出来る結論がまとまっておらず強い批判に直面している。この問題の対処の方向性を誤れば大きな問題となり、委員会のこれまでの努力が無駄になってしまう可能性もある。
上記の問題も発電所建設計画の事例と大差ないのである。これら石油関連法案の推進も同様にエネルギー安全保障に起因するからである。特に石油採掘事業権の入札は、将来のエネルギー安全保障に関わっている。この問題は、微妙で繊細な問題であり、NCPO政権の安定性を左右するようになっている。
MRW.プリディヤトーン元経済担当副首相がNLA宛の公開書簡を発表する記者会見を開催し、副首相在職中に石油関連法案の修正を要請されたことを明らかにした。「国家石油社」の設置に関しては、首相であろうと、誰であろうと、これまで全く言及されることがなかった。その設置のメリットとデメリット及びその設置の必要性についての調査検討も政府は未だ何も着手していない。「この件に関して、特定の個人ないし特定のグループに対して何か遠慮でもしているのでなければ、内閣が委員会による疑わしき要求に対して便宜を計る必要などは全くない。権限は内閣にもある。仮に法案の通りになってしまえば、国家の石油事業は後退することになってしまう」と主張している。以上のようにエネルギー問題は、政府の弱点となっているのである。もし上手に対処が出来なければ、政府の信頼性と安定性を著しく損なうことになりかねないのである。