ポストトゥデイ・オンライン版は、中国製潜水艦調達計画に関し、「潜水艦:思い通りに動く船を座礁させる」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
プラウィット副首相兼国防大臣、ウドムデート国防副大臣、スラポン国軍最高司令官、チャルームチャイ陸軍司令官が揃って、ナ海軍司令官に出迎えられながら、チョンブリ県サタヒップ郡のマヒドン親王海軍工廠を視察訪問したことで、潜水艦調達計画の実現がよりいっそう鮮明になってきた。視察訪問した場所は、マヒドン親王海軍工廠内で潜水艦の補修修繕のためのドックヤード建設用として確保してある40.78ライの土地であった。
プラウィット副首相兼国防大臣は、「海軍は既に随分前から潜水艦を保持する準備が出来ていたが、購入出来ないままであった。これまで海軍が出来る限りの説明を尽くしてみても、タイ湾は浅すぎて潜水が出来ないと批判をされてきたからである。一部の人々は必要性を理解していたが、理解していないように振る舞ってきた」と述べた。今回の潜水艦調達のための努力は、実現により近づきつつある。計画に反対する声としては、景気が悪化し、未だ改善を見せる気配がない自国及び世界の現状を考えて、必要のない巨額の潜水艦調達に予算を浪費することをせず、より必要性の高いその他の計画のために蓄えておくべきであるというものである。
以前、グライソン海軍大将・海軍司令官(当時)は、調達運営委員会が6カ国の候補国の潜水艦を視察して検討した結果、海軍は全会一致で360億バーツの予算で中国製潜水艦3隻を調達することを決定したと説明していた。調達予定の潜水艦は、「元級」S26Tで、AIP(Air-Independent Propulsion system)が登載されており、21日間の連続潜水航行が可能である。この価格には、乗員訓練費、8年間の部品保証が含まれており、他国よりも低額であったからである。
全ては静かに推進されていたが、潜水艦調達に向けた動きは、今回のような視察の姿を披露するまでになった。プラウィット副首相兼国防大臣曰く、「この計画は今年の予算法に計上されており、国家立法議会(NLA)の決議を既に経ている。残りはいつ閣議に諮るかどうかだけである。現時点で重要な手続きは、政府間取引(G2G)のように納入国と連絡調整をすることである」。全ては大幅に前進しており、閣議決定を待っているだけである点を強調していた。「海軍は既に随分前から潜水艦を保持する準備が出来ていたが、購入出来ないままであった。浅すぎて潜水が出来ないと批判をされてきたからである。これまでアンダマン海の200海里内に天然資源がある点を考慮していなかった。潜水できないと批判され、いつも購入出来ないままであった。我々は国家にとって最も良いことをしようと努力していることを保証する」。
NLAが承認した2017年度の国家予算は、2兆7330億バーツであり、その内の2143億4740万バーツが国防省予算であった。同省予算は、潜水艦調達を明記することなく、昨年より78億8610万バーツ、つまり3.8%増加している。同省予算の内の海軍分は、413億2100万バーツであり、安全保障・海外脅威予防基礎計画費目で197億7400万バーツ、装備開発計画費目で8億3850万バーツ、翌年度繰り越し増兵計画費目で66億2700万バーツ、国防計画実行費が18億7000万バーツであった。
今年の年初にジュンポン海軍報道官は、政府とNLAの承認を得て、中国から「元級」S26T潜水艦の最初の1隻を2017年度予算から135億バーツで調達すると発表した。理由は海軍の予算制約である。実のところ、この値段は360億バーツで3隻を同時に調達するよりも高価である。これは明確な合図を発したことになる。
現在、潜水艦調達計画の推進は再び政権とNCPOの安定性を脅かすリスクになりつつある。国家の財政状況が悪く、国家の前進に関わる巨大インフラ計画を推進するための歳入不足に直面し、それを補うための税収確保に迫られている。問題は歳入が歳出よりも少ないことであり、赤字予算となってしまうことである。そのため不要な歳出を削減、中止する準備をしているとの報道が流れており、関係者が反発をしている。農産品価格下落の影響を受けた農業者の救済事業、洪水、干ばつの影響を受けた農業者救済事業といった多くの事業が、予算不足を理由に削減されている。
タイの国家は、毎年多額の維持修繕費を支払って潜水艦を保持しておかなければならないほどの安全保障上のリスクに直面しているとは誰も思ってはいない。混乱の最中に鶏を盗んでゲームを終わらせようとすれば、「潜水艦を座礁させる」だけでなく、「思い通りに動く船」まで嵐に直面させ、座礁することになりかねない。