ポストトゥデイ・オンライン版は、「プラユットが権力を強化、急いで指導者像を固める」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 第4次プラユット内閣の最初の閣議が注目を集めている。ロードマップの残り期間も短くなったが、閣議では、閣僚の職務と権限の見直しが検討され、副首相の役割が変更になった。以前は全ての副首相に様々な事項の監督権限を委任し、副首相が自らの監督下の各省の担当事項にまで直接管理していた。一部の副首相は、各省の大臣が空席の場合には、その担当大臣の代わりさえを務めてきた。また副首相は、首相から特別に任されたIUU漁業問題、ICAOの民間航空機(安全性)問題、産業クラスター育成と地域分業などを含む様々な戦略的委員会の議長を務めてきた。首相によれば、「現在までに副首相が担当してきたことは職務が重すぎたので、今後は、副首相には、これまでのように詳細な事項を担当するのではなく、重要で広範で全体的なことについて、首相と一緒に考えて貰いたい。」と説明した。

 今後、2017年度予算に関して、副首相全員は、自ら細かいことまで管理する必要は無く、各省大臣がアシスタントとして、相談、調整、フォローアップ、アイデア提供などの詳細な事項を担当することになる。簡単に言えば、副首相の残りの職務は、監督するだけであり、各省大臣に主要な政策の実行運営を任せることである。その際には、予算局、文民公務員委員会事務局、公務員発展委員会事務局、法制委員会などの様々な機関を巻き込んでいくことになる。

 今回の変更で注目に値するのは、2人の副大臣である。それは、経済担当のソムキット・チャトゥシーピタックと治安担当のプラウィット・ウォンスワン大将である。経済分野に関して、ソムキットは、これまでも経済政策全体を管理し、それから信頼を置く各省の大臣に職務を分担させている。これまでの経緯から注目を集めているのは、「東の虎」の兄貴分であり、以前はプラユット首相よりも大きな役割を持ち、NCPOの本物の権力者であると目されていたプラウィット大将の方である。今回の副首相の職務分担変更は、プラユット首相が自らに権限を集約し、権力を強化するためであったと見られている。これは、内閣改造前に流布したプラウィットが閣外に更迭される、または自ら閣僚を辞任するとの臆測と一致している。閣僚ポストを揺るがす程の勢いの荒波を受け、プラウィットは、以下のように感情をむき出しにて説明していた。「出鱈目な報道だ。そんな記事をどうやって書けるんだ。首相が内閣改造をして、プラウィットが敗れ去るというのか。私を切り捨てるようなことをすれば、政権を脆弱にさせることになる。私を更迭したいなんて、そんなことどうやって出来るというのだ。実際のところは、何もないのだ。私は高齢だが、それでもまだ仕事はできる。」

 これまでプラウィットは、軍と警察の配置に至るまで、治安問題を一任されており、背後で糸を引いているとみられていた。しかし、その後、プラユット首相の人事配置での役割が見え始めて来た。特に今回の陸軍司令官人事では明確であった。プラウィットが推していたピシットに対抗し、プラユット首相は、チャルームチャイを推して、後任の陸軍司令官に就任させることに成功した。東の虎の兄弟間の意見の相違によって、これまでに何度もプラウィットが辞任するとの報道が流れたこともあったが、最終的には対立は解消してきた。しかし、今回は対立が激化し、プラウィットがプレム枢密院議長と争っていると厳しくケチをつけられることになった。結局、事態が激化する前に急いで本人が噂を否定をしなければならなかった。

 かつてのプラウィットは、「予備」首相または、非議員首相候補として見られており、力が増しているようであった。その後、世論調査での支持率が継続的に低下してきたことを受けて、プラユット首相が自ら指導者としての役割を果たすようになってきた。それから2人は、一緒になって国民からの人気を得ることを競ってきた。滞りなくロードマップ通りに全てを進めるためには、最終的には、指導力と人気が重要であることは否定できないのである。