ポストトゥデイ・オンライン版は、「国家戦略法案は新政権をロックする鍵」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 ミーチャイ・ルチュパン憲法起草委員会(CDC)委員長の発言は冗談ではない。同委員長は、選挙によって誕生した新政権が新憲法で規定されている20年の国家戦略計画に従わずに政策を実行すれば、それは違憲となると述べた。明確な罰則は規定されていないものの、違憲行為としての相当の罰則が下されることになる。

 国家戦略法案は、新憲法の公布・施行後にCDCによって起案され、国家戦略の策定方法、国家改革の方法を定める法律であり、120日以内に提出される。その後1年以内に国家戦略と国家改革の方法が審議される。

 国家戦略の重要な基本的内容は、既に国家改革推進議会(NRSA)が研究し、基本的な部分の起草が終わっている。他方NCPO政権の想定する大雑把なビジョンは、20年後のタイには、「足るを知る経済哲学」によって「中所得国の罠」から脱し、先進国となり、あらゆる方面で安定的であり、あらゆる災害に備えてあること。または、様々な新しい課題に挑戦をしており、安定的で、持続的に年5%程度の経済成長が達成されることである。これを通じて、格差解消という目的を果たし、経済、社会、政治、治安、環境などの持続可能性を確立することである。

 NCPOにとっての国家戦略についての重要な考えは、2014年5月22日のクーデターを無駄にしたくないということである。そのために20年間の国家改革推進のメカニズムとして、「国家戦略委員会」の設置を憲法で規定したのである。NCPOは、過去これまでの政治と選挙は、シャツの色の違いによる対立が循環していると見ている。選挙での得票を得るために、政党は、長期的な視野から構造や基盤の変革につながるような国家のための政策ではなく、目の前の短期的な利益を誘導するようなポピュリズム政策を実施し、妥協も出来なくなっている。

 国家戦略は、未だその内容に関して進捗がなく、どのようなものになるのか政治家を非常に心配させている。既に11月9日に新憲法案は、国王に奏上されており、90日間の検討を経て、公布・施行される段階に差し掛かっている。最も政治家が心配していることは、国家戦略が現在権力継承に向けて励んでいるNCPOの「遺産」となることだと言えるかもしれない。NCPOが国家戦略委員会のメンバーとして残り、それが政府を上回る権力を持つかも知れないからである。同委員会は、政府に指示し、国家戦略に沿った政策が運営されるように調査し、規制・管理するメカニズムである。例外なく、NCPOが用意したロードマップに従って、選挙で選ばれた政権を拘束する「鍵」となる。1回の政権が4年間だとして、5回の選挙を経なければ、政党、政治家は、この鍵を解除することが出来ない。そのために、国家戦略は、選挙で選ばれた政権を支配するための計画なのではないかとの懸念が生じているのである。

 現在、政治家は、NCPOに対して、あらゆる形態の政治活動を解禁し、政治家が国家戦略策定の場に加わることを認めるように要求している。8月7日の国民投票で可決した新憲法案で初めて盛り込まれた20年の国家戦略は、国家の長期的な開発目標を定めるものであり、これまでの政権交代毎に繰り返し変更されてきた国家戦略とも国家経済社会開発計画とも異なる。そのため、政治家はこの動きに乗り遅れるわけにはいかないのである。