ポストトゥデイ・オンライン版は、「独立機関:セットゼロはなくなったが、ブルブル震える」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
ついこの前までは、「政党のセットゼロ」が話題となり、憲法起草委員会(CDC)が攻撃の的になっていたが、現在、CDCが「独立機関のセットゼロ」を企んでいるとの容疑がかけられている。その理由は、新憲法が施行される前に職務についていた独立機関委員に関して、2007年憲法では独立機関の任期が満了するまでは、職務を継続すると明記してあったの対して、憲法草案の第273条では、その進退について、付属法で定めると記してあるからである。この点が独立機関委員達を震えさせ、幅広く議論が巻き起こしている。
先日、タイ貢献党が全ての独立機関をセットゼロにすべきであると批判の声を上げた。プームタム・タイ貢献党幹事長代行は、CDCが一部の独立機関のセットゼロを進めることを煽り、「選挙管理委員会(EC)は、政党を解党処分にしたいときは簡単に言うが、自分が解散させられそうになれば、リセットされる側の気持ちもよく分かるようになるだろう。権力の座に固執すべきではない。また真実を知っているか、知らないままの状態で、自らが誰かを縛ることに固執すべきではない。もし、(セットゼロによる)手続きによって損失が発生するのであれば、連続性が保てるように制度を設計すれば良いだろう」と述べた。
CDCは、選出委員会が独立機関委員及び憲法裁判所判事の中で憲法草案に定めた要件を満たさない人物の欠格を指摘すると手続きを説明する。CDCがこのような合図を送ってきたことは、新憲法及び各独立機関に関する付属法が施行となれば、少なくない数の独立機関委員及び憲法裁判所判事達が失職になる可能性がある。ECの中では、この境界線上にいるのが、ソムチャイ・シースティヤコンとプラウィット・ラッタナピアンの2人であり、他の裁判官出身の委員は問題はなさそうである。ソムチャイとプラウィットの両名は、それぞれ独立機関委員として失職となる要件があるが、理由は異なる。プラウィットの場合は、以前に国家オンブズマンを務めていたため、憲法草案第216条の「憲法裁判所判事または独立機関の委員でないこと、または、以前にその職務にあったことがないこと」という条件を満たせない。他方で、ソムチャイは、以前に独立機関の委員を務めたこともなく、政治職にも関係がないため、特に問題はないように見える。しかし、憲法草案第222条が判事か検事出身でないEC委員については、市民社会で20年以上の職務経験を有することを要件に定めているため、ソムチャイは、今後、選出委員会に対して自らが20年を超える職務経験を有していることを納得させなくてはならない。
国家汚職防止委員会(NACC)は、同じような問題を抱えるもう一つの独立機関である。ワチャラポン・プラサーンラーチャキット警察大将・NACC委員長は、ノンタブリ県に位置するNACC事務所のこの職務に就く前は、プラウィット副首相兼国防相付の政務担当首相府副秘書官長であった。つまり、「仏暦2535年(1992年)政治職公務員法」の規定での「政治職公務員」に該当することになる。また上院、下院と同じ身分を有し、同じく政治職に当たる国家立法議会(NLA)議員でもあった。従って、ワチャラポン委員長は、憲法草案第216条と第202条の「下院議員、上院議員、政治職公務員、もしくは地方自治体の議会議員及び首長でないこと、または、以前にその職務にあってから10年を経過したこと」という2つの要件で失職の基準に当てはまることになる。アーコム・ウィタヤーピタックNACC委員も同じような運命を辿ることになるもう一人である。NACC副事務局長を経験するまで、長年に亘ってNACCの勤務を続けてきたが、会計検査院委員の役職を務めた経験があるので、第216条に該当し、失職となる可能性がある。
憲法裁判所に関しては、憲法草案第200条で、「憲法裁判所判事は、政治学か法学の専門家であり、タイ国内の大学で5年以上の期間、教授職に有ったものが選出される」規定している。問題は、タウィキアット・ミーナガニットである。彼は、教授昇格の国王承認を得たのが、2011年であり、憲法再判事に就任したのが2013年であった。また同様にナカリン・メークトライラットも教授昇格が2011年であり、憲法裁判所判事に就任したのが2015年であった。憲法草案の要件をナカリンと、タウィキアットの2人に適用すれば、教授職の期間が5年に満たないことから、失職となる可能性がある。