ポストトゥデイ・オンライン版は、「NCPOとタイ貢献党の和解の道は閉ざされた」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。


 国家立法議会」(NLA)においてナリソン・トーンティラート元タイ貢献党議員(サコンナコン県選出)の2007年憲法改正法案審議の際の替え玉投票問題に関して、弾劾決議が賛成221対反対1、棄権2で可決された。またウドムデート・ラッタナサティアン元タイ貢献党議員(ノンタブリ県選出)の2007年憲法改正法案を国会提出前に国会議長に提出した手続きの不正に関しても、賛成206対反対15、棄権3で弾劾決議が可決した。これらの弾劾の可決によって、ナリソンとウドムデートの2名は、5年間の公職就任禁止処分を下されることになった。新憲法案では弾劾権を憲法裁判所と行政裁判所のみに与え(上院による弾劾権を廃止にし)たので、これが2007年憲法に基づく最後の国会での弾劾決議となった。


 NLAでのこのような採決結果となったのは、NCPOとタイ貢献党の対立関係が強く反映したからである。これが未だに各派の対立を断つことができず和解を困難にさせているのである。今回の動きは、NLAでのインラック前首相の弾劾から始まり、刑事訴追、そして民事訴訟での損害賠償請求、現在の行政執行手続きによる350億バーツの財産没収と引き続いている流れと一致したものである。


 当初、NCPOと旧インラック政権側との間で和解をする努力が行われていた。その頃には、コメ担保融資制度に関する訴追はほとんど前進することはなかった。さらに、その頃には、2017年の総選挙後に旧政権側から再び首相が選出され、新政権を運営することになるとの臆測があった。このような潮流は、徐々に消失し、静かになっていき、代わりにプラユット首相が再任するとの見方が強くなっていった。


 NCPOとタイ貢献党の関係を計る上で欠かすことのできない重要な合図がウドムデート氏の弾劾決議から見ることが出来る。採決を取る前の最終コーナー時点では、NLAでウドムデート氏の弾劾を否決をするように働きかけるロビー活動が行われていた。当初から、その票数は少なくはなかった。さらにウドムデート氏と親しい「大物女性政治家」(当館注:スダラット元農業協同組合相を指すと思われる)が自らロビー活動を手助けした。この「大物女性政治家」は、NCPO内の大物との人脈を有している。そのため、弾劾否決派の票は勢いを増していた。


 そうした際に、ジェームサック・ピントーン元国家改革議会議員は、「もし、この金曜日にNLAが違反者を弾劾しなければ、どうやって社会に説明するというのか。政府とNCPOは一緒に責任を取るというだろうか。憲法裁判所がこれだけ明確に(違憲行為であるとの)判決を下していて、さらに国家汚職防止委員会(NACC)が全会一致で違反を指摘しているというのに、NLAが弾劾をしないというのであれば、ナリソンとウドムデートの両名に加えてNLAも同様に弾劾しなければならないのではないだろうか」と主張した。また同様にカムヌン・シッティサマーン元国家改革議会議員は、「この事案は、単なる弾劾のみの事案ではない。既に憲法裁判所が違憲行為であると判決を下した事案であり、同判決は最高のものであり、全ての機関を拘束するものである」と述べた。これらの発言と社会の潮流は、NLAへの足枷となり、圧力をかけることになった。もしウドムデートを救済する合図を送ってしまえば、NCPOへの信頼を損ねることになり、将来への問題を生み出すことになりかねない。


 NACC代表のスパー・ピヤチットは、NLAへの弾劾審議の閉会陳述において、以下のように明確に述べている。「弾劾対象者(ウドムデート)は、国会議長が議題の指示をする前に憲法改正法案の内容に修正を行ったことを慣例に従ったという説明で追及を逃れようとしているが、NACCとしては、憲法は国家の最高法規であり、改正の方法を明記しているので、そのような修正は不正である。国会議長の指示の前に憲法法案内容を修正することは出来ない。法律を逃れ、慣例を引き合いに出すことも同様に許されることでなく、追及を逃れることはできないと判断する」。


 一方、ウドムデートの閉会陳述では、「国会審議の前に憲法改正法案の内容を修正したことは、意図的なものではなく、与党側国対職員に政府職員と調整することを任せていたものであり、皆が憲法違反、国会規則違反ではないと意見が一致している。弾劾追及は、偽物の憲法改正法案と憲法改正法案をすり替えたというものである。一般人は混乱するだろうが、憲法改正を提案したメンバーの意図に沿わないミスが見つかったため、修正手続きを行ったに過ぎないと保証する」と述べた。結局、NLAでウドムデートの弾劾は可決し、タイ貢献党とNCPOの対立関係はより決定的になった。