クルンテープトゥラキットは、タイ共産党残党の動きに関する解説記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 多くの人が「違法結社」容疑で逮捕され軍事裁判所に拘留されている「15人の高齢者」がスケープゴートではないかとの疑問を投げかけている。また、この「民主主義革命党」なる組織が本物か偽物かと疑いがもたれている。

 国家情報庁によれば、同高齢者グループの中の重要人物は以下の4名である。
(1)ウィラチャット・チャンサアート、62歳。ノンタブリ県バーンクルアイ在住で、スラチャイ・セーダン(元タイ共産党員)とスナイ・ジュラポンサトン(元ナコンサワケン県選出下院議員)と親しい人物。
(2)プラパート・ロージャナピタック、67歳。トラン県在住で、プラサート・サップスントン元タイ共産党中央委員の弟子に当たる人物。
(3)プラモート・サンハーン、63歳。サトゥン県在住で元サトゥン県農業専門学校副学長、元タイ共産党員バンタット山地管区所属(ナコンシタマラート-トラン-パッタルン-クラビ-サトゥンの各県を担当)。
(4)シリラット・マノーラット、71歳。パッタルン県在住で元タイ共産党バンタット山地管区所属。

 以上の4名全員は、現在ラオスのビエンチャン在住、「レッド・サイアム」代表のスラチャイ・セーダンとの関係を持っている。「民主主義革命党」ないし「民主主義革命戦線」とは、どのような経緯を辿ってきたのだろうか。国家情報庁の説明によれば、「民主主義革命党」は、「タイ革命人民党」から分離して設立された新しい団体である。「タイ革命人民党」は、(以前と同じイデオロギーを持つ)元タイ共産党員達よって、2012年に結党会議が行われ、赤シャツ支持者を勧誘し、党員を拡大することを目指した。「タイ革命人民党」は、タイ社会の天地を転覆させるという革命方針を宣言をした。スラチャイ・セーダンは、自らの「レッド・サイアム」率いて、同党に合流した。プラユット陸軍司令官が、軍によって権力を掌握した直後、「タイ革命人民党」の党員達は、姿を隠して、地下に潜った。同党の中央役員達は、近隣国に脱出し居住している。2015年、スラチャイのグループは、「タイ革命人民党」から分離して、「民主主義革命党」の設立を計画した。そして、信頼できる人物に委任し、「元同志」のノンタブリ県の自宅にて、新党の結党を行った。その後、スラチャイによる新たな革命組織の幹部達は、新たな幹部を育成しながら、全国で大衆基盤を拡大させていった。

 治安機関関係者によれば、NCPOは、8月7日の国民投票の前から、この新たな革命組織の幹部の動向を軍に監視させていたという。もし憲法草案の否決派が勝利した場合には、赤シャツがプラユット政権打倒の大衆運動を実施するかも知れなかったからである。結果的に国民投票は、賛成派の勝利であった。そのため、NCPOは、上南部7県での爆弾事件が発生するまで、彼らを逮捕するのが遅れたのであった。一方、軍は、彼らの幹部を速やかに逮捕できたのであった。革命組織のネットワークが逮捕されたとはいえ、スラチャイ・セーダンは、近隣国が彼の居住を認めている限り、未だにタイでの革命思想を普及させているのである。