ポストトゥデイ・オンライン版は、「プラユットはプラウィットと対立、オンブズマン任命の道を閉ざす」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下の通り。

 以前にも国家立法会議(NLA)で問題となった国家オンブズマン委員の選出が大きな問題になり、プラユット首相兼NCPO議長が暫定憲法第44条の強権発動によって問題解決に乗り出さざるを得なくなった。7月13日、プラユット首相は、2016年第40号NCPO議長命令を発出し、独立機関及び憲法裁判所の役員選出を中止させた。中止となった機関は、選挙管理委員会、国家オンブズマン事務局、国家汚職防止委員会、国家人権委員会である。

 この命令を発出した理由としては、国民投票の結果を見届けて、新しい憲法の規定に従って、独立機関役員を選出するためと説明されているが、今回の44条発動の真相は、国家オンブズマン委員の選出を中止させることであった。

 先日のNLAでの国家オンブズマン委員の選出に際し、大きな問題が起こった。以前にもNLAの選出委員会が選出したものの、NLA総会で賛成66票対反対66票、棄権24票で国家オンブズマン委員就任を否決されたレーワット・ウィサルットウェーット医師が再び国家オンブズマン委員候補として応募し、選出委員会から4票対2票で選出され、NLAに人事承認を求めてきた。選出委員会は、(1)ウィラポン・タンスワン委員長、(2)ヌラック・マープラニーット憲法裁判所長官、(3)ピヤ・パタンター最高行政裁判所長官、(4)ポンペット・ウィチットチョンチャイNLA議長、(5)シラパチャイ・サラパクディー陸軍中将・最高裁判所大法廷代表、(6)アカラウィット・スマーウォン行政裁判所大法廷代表であった、

 このことによりNLA内部でレーワット医師の就任に賛成のグループと反対のグループに色分けされていった。反対派は、NLAの経歴倫理調査委員会の報告により、レーワット医師が以前にナタウットUDD(赤シャツ)幹部が商務副大臣在職時に顧問をしていた経歴があり、政治的に中立的でなく、国家オンブズマン委員に相応しくない人物と見ている。またレーワット医師は、以前にNLAにより人事を否決されたのであるから、法律で禁じられていないとはいえ、慣習的に再び選出されるべきではなかったと見ている。他方で賛成派は、レーワット医師は法的に欠格条件に当たっておらず、専門家で構成させる選出委員会によって選出されたのであるから、NLAは手続きを進めるべきであると考えている。

 この問題がNLAにおいて大きくなっていった。レーワット医師就任への反対派は、NCPO内の「兄貴」(当館注:プラウィット副首相兼国防相)がNLAにこの国家オンブズマン人事を承認させようとしているとの情報を得ていたから、より反対派が増えていったのである。反対派は、NLAの委員会を辞任することから動きを始め、国家オンブズマン委員の投票を誰が賛成したか反対したか知ることができるように記名投票にすることをNLA総会に提案しようと動いた。

 解決に向けて2つの努力が行われた。(1)レーワット医師に辞退させ、取り下げさせて再度別の候補を選出し直す、(2)NLA議長に国家オンブズマン委員の人事承認決議を対立が収まるまで無期限に延期させることであった。だが、この2つの解決策は、使えなかった。レーワット医師は辞退せず、NLA議長は選出委員の一人であり、利益相反になってしまうからであった。

 最後にはプラユット首相が、44条の強権により選出を中止させることになった。注意深くみると問題はより根深い。NLAに指図し過ぎるカリスマであるプラウィットの脚に蹴りをいれるという合図を送りたかったのである。このためNCPO議長命令で、独立機関委員の選出への道を閉ざしたのである。今回はNCPO議長による強権発動により国家オンブズマン委員の選出を中止させ、火消しを行ったが、NCPO内部での対立のサインが見えたのであった。