国立ラチャパット大学グループ、タイ商業銀行(SCB)が就職差別を行っているとして、今後の取引を停止する方針を発表。

SCB側は就職差別を否定。

6月6日にSCBがウェブサイト上で発表した求人が応募資格として有力な国立、私立大学14校の卒業者に限定していたことが問題の発端。この中には、ラチャパット大学系の40校の一つも含まれていなかった。

ラチャパット大学、ラチャモンコン工科大学卒業者の扱いは、この10年くらいの間にタイでも大きな問題になっています。大学が大衆化して、誰でも入学できる時代になったものの、企業はラチャパット卒業生というだけで面接の機会も与えないということが、結構まかり通っています。同じように学費を払い、4年間の時間を使って卒業しても、等しく大卒とは、見做してもらえない。新たな格差問題になっています。

 ラチャパット大学が差別される背景として、元々、地域の教員養成短大だったここともあり、大学に昇格するのが遅かったことがあります。その分、同窓会ネットワークなどの影響力弱いため、有力企業へのコネがありません。学力的にもあまり信頼されていません。これまでの経験から感じるところですが、ラチャパット卒業生のGPA4.0(オールA)くらいでも、有名大学での学生のGPA3.0(オールB)未満くらいのレベルです。教育内容も、暗記、試験の繰り返しが多く、高校生のような感じがします。論理的思考や創造力という点などでは、確かにチュラ大やタマサート大とは比べるまでもない水準です。差別はよくないですが、企業も採用のコストを減らすことを考えると、ある程度の学歴フィルターがかかってしまうのも仕方ないのかもしれませんん。

 ラチャモンコン工科大学グループでも、SCBから十分な説明がない場合には、ラチャパットと同じく取引停止にする可能性もあるとのこと。

この動画では、ラチャパット大学の就職差別問題がなぜ大きな問題となるのか適切に解説されています。
 
タイの全大学生の約4割、最大のグループがラチャパット所属しており、しかも低所得者家庭からの主要な進学先となっている。チュラやタマサート大学が中所得や高所得の家庭で構成されているのとは対照的です。
 
ラチャパット大学卒業者が就職差別されることは、社会階級を固定化することにつながります。
企業としては、単に優秀な学生が欲しいだけなんでしょうが、貧困家庭出身者にも一定の機会は与えてあげて欲しいものですね。

 ラチャパット大学は、日本のいわゆる「駅弁大学」の役割に近いものがありますよね。日本ならば、地元の県庁、市役所、地方銀行、教師、ローカルメディアなどの一定の所得と地位を得られる就職先がありますが、タイの場合は、地方銀行もありませんし、未だに地方分権が不十分で、中央行政の出先機関が幅を利かせてますし。地方に根付いた産業や経済構造が不十分過ぎるのだと思います。結局、中央や各地方の拠点大学に良い就職先を独占されてしまっているままですよね。せっかく貧困に苦労しながらラチャパット大学を卒業しても、社会階層の上昇はあまり期待できない。こういう状況はなかなか改善していかないのでしょうね。

 まだまだこの先10年くらいなら成長の余地がある国なので、大学名である程度の差別はあっても、夢も希望も多少はみられるのだろうと思います。少なくとも貧困、低学歴、農民の親世代よりは上の生活はできると期待はできますよね。ですが、この格差問題や社会階層を放置して、20年後に少子高齢化で成長も出来なくなったときには、恐ろしい状況が待っていそうです。

 ラチャパット出身でも優秀な人、潜在力のある人は、それなりの数います。ですが、タイの就職は、同窓会組織や先輩からの紹介などのコネ要素が大きいので、やはり不利になりますね。そういう不利な状況に負けないように、資格取得とか実務に特化するなどの特色を見つけて頑張ってほしいですね。

http://www.bangkokpost.com/news/general/608400/rajabhat-to-cut-ties-with-scb-over-discriminatory-job-ad 
http://www.matichon.co.th/news_detail.php?newsid=1435677976