マティチョンは、「新しい後任のクリッサダー・ブンラート農業大臣歓迎」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
クリッサダー・ブンラート氏であれば応援を得られ、良い結果を出せるとの期待は、南部天然ゴム農家グループ及び民主党の指導者達の期待を反映したものであると見做せる。しかし、素晴らしい成果を出してくれるとの期待は、他方で危機を導くこともある。イメージと現実が異なることは当然のことである。実際のところ、クリッサダー氏は、南部地方から出世をしてきた人物であり、過去にはヤラー県とソンクラ-県の知事を経験しており、従って、民主党との関係を有し、南部ゴム農民とも良好な関係を有しているのである。だが、南部地方だけでタイの全国を意味するわけではないので、他の地方の農家との関係は良好であるのかどうかという疑問が自然と沸いてくる。
タイ社会は、クリッサダー氏のソンクラ-県知事在職時代から同氏のことを承知している。その間は、大きな政治運動が連続して発生している時期であり、南部ゴム農家による「南部シャットダウン」が発生した。スラタニ県の封鎖から始まった南部地方の封鎖は、2014年「バンコク・シャットダウン」の実験モデルとなった。クリッサダー氏のイメージとは、(反インラック運動の象徴の)「ホイッスル」を掲げたイメージであり、だからこそ、ご褒美として、内務事務次官に就任でき、定年退職後には、大臣のポストが与えられたと見られている。それは奇妙なことではない。シリチャイ・ディッタクン陸軍大将が、労働大臣に就任したことや、チャッチャイ・サリガラヤ陸軍大将が農業協同組合大臣に就任し、その後には副首相までに昇格したことと同様のことなのである。問題は、期待が高すぎることである。
クリッサダー氏は、突然、たちどころに商品作物の値段を魔法のようにつり上げることを期待されているのである。クリッサダー氏はそのような人物であると想定されているのである。しかし、実際のところ、(商品作物の値段管理に関して)農業協同組合省が担当している部分は、「川上」のみに過ぎなく、「川下」は、その他の省庁の役割に委ねられている。そして、最後の「河口」には、「国際市場」が待っている。
ピティポン・プンブン・ナアユタヤ氏が農業協同組合大臣に就任したときも、チャッチャイ陸軍大将が後任の農業協同組合大臣に就任したときも、同じような期待が存在した。しかし、その結果はどうであったろうか。ピティポン氏は交代させられ、そしてチャッチャイ大将も交代させられた。これが実際に生じてきた恐ろしい現実である。現在、政治団体や政党から批判されて直面している状況は、冬も夏も何度もこれまでに経験してきたベテランのクリッサダー氏ならば、突破口を開けると考えているのかもしれないが、それは現実を理解していないからである。つまり、クーデター後の現実の状況を理解していないこと、実際に農業協同組合省が直面している現実を理解していないことである。もし、これらを理解できれば、他の人の意図が分かることになり、沈黙せざるを得なくなるのである。