ポストトゥデイ・オンライン版は、軍政党設立に関する評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
国家改革推進会議(NRSA)議員が2018年の総選挙に出馬する準備のために次々に辞任をしていく中、「軍政党」設立準備の動きが再び注目を集めるようになってきた。それは、ソムポン・サガヴィーNRSA議員が議員辞職をした際からである。同議員は、選挙に出馬する準備のためと辞任の理由を語ったが、出身のタイ貢献党に戻るのではなく、既に登録済みの或る小政党にタワチャイ・サムットサコン陸軍大将(NRSA政治分野)とスチャート・チャンチョーティクン陸軍大佐(NRSA地方行政分野)と行動を共にすることを明らかにした。
ソムポン議員によれば、当初は、一つの小政党を改革して発展させ、その間に2つの政党を勧誘して、合併し、新政党を設立する。党員同士を助け合い、党員の確保や各選挙区での党支部の設置など予備選挙実施のための負担を減らすためである。「合併をする小政党は、軍の代理政党ではない。一部の軍人が参加するだけである。だがもし軍が本物の軍政党を設立するのであれば、この小政党は軍政党と同盟関係を築く用意はある」とソムポン議員は述べている。
ここでの重要なジクゾーパズルは、タワチャイ陸軍大将が予科士官学校12期生でプラユット首相の同期生であり、首相が信頼を置き、クーデター後に数々の重要な仕事を任せてきた友人であることである。タワチャイ大将は、選挙に出馬するためにその小政党に加わることはなく、自身は国家改革が終わっていないので、政治活動をする気はないと否定したものの、今だにこの噂が消えることはない。
スチャート陸軍大佐は、小政党を糾合して、選択肢となり得る大政党を設立するとの構想を明らかにした。その候補の小政党として、ソンティ・ブンヤラットガリン陸軍大将・2006年クーデター団のリーダーが率いる「母国党」、ダムロン・ピデート元国立公園局長が率いる「タイ森林返還要請党」(パック・トゥワン・クーン・プーン・パー・ヘン・プラテートタイ)、セーリーピスート・テーミヤーウェート警察大将(元警察長官)が設立準備中の新党の名前を挙げ、これらの小政党をまとめる調整役が、ソムポン議員であるという。
確かに2017年憲法の仕組みでは、小政党には制約が多い。政党の立ち上げ・登録に関しても、設立発起人が15人揃ってから選挙監理委員会(EC)に申請が必要であり、その後、これらの設立メンバーが180日以内に500人以上の党員を集めなければならない。そして現在議論が続いている予備選挙にしても、小政党には不利である。それ以外にも全選挙区で強い地盤を持つ大政党と競って支持を受けることなどは容易なことではない。今回の選挙制度では、小選挙区での得票を比例代表にカウントするので、より大きな影響を受けることになる。小政党の合併による中規模政党の設立は、可能性のある選択肢である。「軍政党」を設置することは、NCPOが選挙に臨むことを決断した際に、NCPOの政権維持への道を支援するためのメカニズムの一つとなる。
現在、プラユット首相は、将来に向けて状況が整うのを待っている。選挙を実施するべきかどうか、どのようにするべきか決断する前であるので、余計に軍政党設立の噂は広まっている。今後どのような形であれ政治を前進するのであれば、NCPOの視点から見れば、軍政党は重要なサポーターとなる。選挙を実施して、その後、国会が非議員首相を選出するには下院議員による支援が不可欠である。首相の選出には、権力継承を防ごうとする政党同士の連携を封じつつ、上院議員250人以外にも下院議員も加わって、375票を確保することが必要となる。さらに首相に選出されたとしても、下院での支援が得られなければ、地に足が付かない状態で不安定となり、重要法案を通過させることができなくなる。
多くの世論調査機関の調査によれば、国民は、国家改革の推進のため、NCPOによる軍政党設立の考えを支持しているという結果が出ている。しかしながら新しい制度の下では、新政党の設立は容易なことではない。各地域に支部を設置するなどの要件があるからである。小政党を纏め上げて中政党に拡大させることは、新党を設置することと違いがないのである。これまで何度も経験してきたことへの教訓が見られるのである。