ポストトゥデイ・オンライン版は、「トゥー兄貴の4つの質問、選挙を潰すことを狙う」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
NCPOによるこれまで3年間の行政運営は、少なくとも3回、選挙実施延期を狙ってきた。1回目は、2015年の国家改革会議(NRC)での憲法草案の審議に際してであり、20人のNRC議員が憲法草案の採否に係る国民投票の際に、追加質問として、「憲法公布施行後に2年間改革を実施してから総選挙を実施する」とNRC総会に提案をしてきたことである。その時には、ボーヴォンサック憲法起草委員会(CDC)委員長による憲法草案がNRC総会で否決されたため、同追加質問についてNRCで実際に検討されることはなかった。2014年暫定憲法の規定により、憲法草案が否決された場合には、その場でNRC議員達が失職となったからであった。ともかく、憲法草案の否決によって新しく憲法草案を起案し直さなければならず、間接的に総選挙の実施時期を延期にさせることになった。
2回目は、クーデターから3周年に当たる5月22日のプラモンクットクラオ陸軍病院での爆弾事件の直後での意見表明であった。プラユット首相兼NCPO議長は、まだ国家が静寂にならないのであれば、どうやって総選挙を実施するのだと意見表明をした。「皆さんに考えてもらいたい重要な点は、これまでの問題と同じように、爆弾を仕掛けられたり、兵器を使用したりし、国民同士の対立を深めるような、国家がこのような状態であれば、総選挙を実施することが出来るのであろうかということである。私は実施に向けて設定するだけであり、皆が協力する必要がある。目的地に一緒に向かうためには、政府に全てのことを設定させてはならない」5月23日の発言である。
3回目は、テレビ番組「国王の科学:持続的な開発に向かう」の中で総選挙の延期にに直接的に言及することなく、国民に対して総選挙実施に向けて準備が出来ているかどうかという質問を投げかけたことであった。プラユット首相による4項目の質問は以下の通りであった。
(1)あなたは、次の総選挙後に統治(ガバナンス)が出来る政府が成立すると思いますか。
(2)もし、(ガバナンスが)出来ないのであれば、どうしますか。
(3)総選挙の実施は民主主義の中の重要な一部です。ただし、総選挙の実施だけにこだわり、国家の将来とその他のこと、例えば国家が戦略を持ち、国家改革を実施するかどうかということを考えないことが正しいのだろうか。
(4)あなたは、あらゆるケースで不適切な行為をする政治家に再び総選挙に出馬する機会を与えるべきと考えますか。もし再び機会を与えるべきであれば、再び問題が生じることになるが、誰に解決させるのですか。またどういう方法で解決しますか。
以上の4項目の質問は、政府によるテレビ番組の一斉放送を通じた呼びかけであることからも明らかなように、首相が国民に対するメッセージ伝達を意図したものである。マスコミ記者からのインタビューに答えたものではない。これは、NCPOの総選挙の実施延期の意図を反映したものである。
NCPOによる総選挙(延期)の正当性は十分であろうか。その回答は、「政治的」な正当性のみ十分というものである。なぜなら、法的な正当性としては、NCPOに総選挙実施を反故にするようなことを認めておらず、2017年憲法が公布・施行されたため、手続きの変更は、憲法の規定に沿わなくてはならなくなった。(このため)法的正当性によってNCPOを支援することが出来ないのであれば、政治家を貶めて、総選挙実施延期のための政治的正当性を探さなければならない。これまで政治家の社会的価値はある程度低かったことは否定できない。(政治家が)自分以外に誰にも責を帰すことが出来ないこともあった。(このため)権力の恣意的な執行、民主主義ルールの破壊、対立の煽動などを理由に軍が権力を掌握してきた。2006年クーデターであろうと、2014年クーデターであろうと、そのような同じ理由によって生じたものである。
政治家の正当性が低いことは、選挙で選出されていない政権に国家運営を任せる正当性を与えることになる。仕事の効率性に関して疑問を投げかけられても、総選挙が実施されない期間中、いかなる色の政治グループも道路を封鎖して、デモ行為を行うことが出来ないことが確実に保証されている。(軍政は)国家の静寂と引き替えに政権の座に留まり続けることを要求しているかのようである。
(プラユット発言により)これまで設定してきたロードマップ通りには総選挙を実施したくないというNCPOの政治思想が明らかになったのである。しかし、NCPOは、法的にはそれが不可能であることを熟知している。そのために国民による政治家への不信感を「テコ」にしているのである。今後の状況については、内務省が国民の意見を集約した後、NCPOがどのように動くのかを注目していかなければならない。自らの掌中にある特別な権力を行使して、総選挙の実施を無期限に延長させる可能性があるからである。