ポストトゥデイ・オンライン版は、「NCPOの権力の終盤、反政府デモ隊が続々と現れる」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
現在の国家状況は、NCPOの権力に挑む動きがある程度生じており、これによる動揺が見られる。まず、それは、タンマガーイ寺院のデモ隊から始まった。この動きは、直接的な政治デモではないものの、暫定憲法第44条に基づく強権発動での警察隊による捜索が僧侶達や信者達の反発によって追い払われたことで、NCPOに少なからず恥をかかせている。
忘れてはならないことに、これまでに公共に流されたイメージは以下のようなものである。警察及び法務省特別捜査局(DSI)の職員がタンマチャヨー住職の身柄を捜索するために寺院内に侵入したものの、期待していた通りに住職の身柄が見つからず、当局は、第44条の発動により、全ての僧侶・信者を寺院外に退去させようとした。この行為により、タンマガーイ寺院の支持者を結集させ、当局への反発を生み出すことになった。そして、当局は、衝突を避けるために後退せざるを得なくなった。タンマガーイ寺院の僧侶と信者達は、NCPOに本気の平手打ちを喰らわせたようなものである。なぜなら、この出来事により、タイ社会は、暫定憲法第44条の強権が全く意味の無いものであると思ったからである。
タンマガーイ寺院以外に新民主主義運動(NDM)による興味深い動きもある。NDM指導者のランシマン・ローム氏は、2月19日に開かれた記者会見の際に、政府は今年8月中に総選挙を実施しなければならない、さもなければ、NCPO政権に圧力をかけるためのデモを実施すると主張した。「NCPO政権は、選挙を実施すると約束していた。国民投票の実施後にも同じように何度も今年中に選挙を実施すると言っていた。少なくない数の国民が国民投票の際に今年中に総選挙を実施して欲しいがために憲法草案に賛成票を投じたと思っている。これ以上政府を信用することなど出来ない」とランシマン氏は述べた。NDMは、クーデターの発生時からNCPOと常に対立を続けてきたもう一つの政治グループである。NCPOは、NDMに対して思うがままにデモ活動をさせないようにするため、これまで何度も強権を行使してきた。
クラビー県石炭発電所建設計画反対運動グループの動きもある。政府が再度の環境影響評価、健康影響評価を実施し、その結果を待つことを決定したため、現在は、反対派は、デモ集会を一旦停止したものの、問題そのものが解消したわけではない。もし政府が再度建設計画を再開しようとすれば、反対派は、「公共集会法」違反など全く気にもせず、再度首相府前でのデモ集会を再開させることになる。
現在生じている事象は、政府に重要な合図を送っているといえる。なぜなら全ての動きがNCPOの権力の終盤に差し掛かった現在になり同時に一緒に発生しているからである。指摘しておかなければならない点は、NCPOの権力の終盤とは、国民投票を通過した憲法草案の修正版が国王に奏上され、その後に続く期間である。ウィサヌ副首相の説明によれば、「現在、国民投票を通過し、修正を終えた憲法草案を2月17日に国王陛下へ奏上したところであり、現在、承認されるかどうかは国王陛下のご判断による。暫定憲法に記載されているようにその間90日の期間がある」。つまり、NCPOに残された時間は、新憲法が公布・施行されるのを待っている間だけに等しいのである。新憲法が公布・施行されてしまえば、同時に総選挙実施までのプロセスが開始され、NCPOの権力の終焉までのカウントダウンが始まってしまうことを意味する。
よく知られているように、新憲法が公布・施行されてから240日以内に憲法起草委員会(CDC)が4本の付属法案の起案を終えなければならず、国家立法議会(NLA)が60日以内に検討を終えなければならず、選挙関連の付属法が施行されてから150日以内に総選挙が実施されなければならない。全ての手続きに関する期間は、憲法草案に明確に記載してあり、固定されている。従って、軍政関連機関「5つの河」でさえ、それを破るわけにはいかなくなる。これを計算をすれば、NCPOの権力の残り期間は1年もしくは、それより少し長くても2年には満たない期間に過ぎないことが分かる。このように残り期間が明確になったことが、激しい反政府デモを促す要因となっている。これまでのデモは、全力とは言えないデモであったが、それは、NCPOがいつまで権力の座に留まり続けるのか誰にも分からなかったからである。
反政府デモを促している要因は、単にNCPOの権力が終盤に差し掛かったことだけではなく、NCPOによる様々な問題解決の為の取り組み、特に経済問題解決のための取り組みが、それほど国民から評価されていないことにも拠っている。各世論調査機関が発表した調査結果でも、国民は政府に経済問題の早期解決を望んでいるという内容で一致していた。これまで説明してきたような諸要因を理解すれば、何故NCPO政権が現在反対デモに直面することになっているのか不思議に思うことはないだろう。今後、NCPO政権が大きな新たな台風をどのように対処していくのか注目していく必要がある。