ポストトゥデイ・オンライン版は、「国民和解行きの最終列車」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
「調和創造と国民和解」は、国家運営を担って来たNCPOのこの2年間の政策とロードマップの一部であったが、未だ具体的な成果が見えないままとなっている。以前には、国家改革会議がアネーク・ラオタンマタット氏を議長とし、「国民和解方針研究委員会」を設置し、多くの提案を行った。中でも興味深い提案は、汚職不正と刑法第112条不敬罪に関連する事案を除いて、恩赦を実施すべきというものであった。同委員会の提案は、政府に提出されたものの、その後、政府からの回答はなく、消え去ってしまった。首相府タイクーファー・ビル内の事務机の引き出しの中の書類ケースに収納されてしまった。
それどころか、以前には国民和解に関する事項をタイ史上初めて憲法草案に盛り込む試みが行われたが、結果的には同憲法草案は国家改革会議によって破り捨てられてしまい断念してしまった。国家立法議会(NLA)が代わりにホストとなり、国民和解のための努力をしようとしても、最後にはプラユット首相兼NCPO議長が即時にブレーキを踏んでしまい、NLAは進めることが出来なかった。つまり、国民和解への道は、長い期間に亘って、絨毯の下に隠されてきたのであった。
先週、政府は、この国民和解を具体的に実行していくことを発表し、「国家改革・国家戦略・調和創造国民和解行政運営委員会」を設置した。同委員会の設置に関し、政府は、恩赦の実施に焦点を当てるのではなく、根本的な原因を解消することを通じた、構造的な国民和解の実現を目的としている。要するに政府は、国家改革を基礎としながら、国民和解を進めようとしているのである。その意味することは、国家改革が成功すれば、その成果として様々な次元での平等が実現し、それにより、全ての人々が等しく資源を利用できるようになり、自動的に国民和解が達成されるということである。
ともかく、政府の動きに注目すれば、国民和解に本気で取り組む気があるようである。そうでなければ、政府は自らがホストするようなことはしなかったであろう。特にプラウィット副首相兼国防大臣自らが、国民和解のための戦略運営を担っていることから、その本気度が覗える。プラウィットは、「現在、国民和解し、共存出来るようにするため、(委員会の)組織を準備しているところである。実行のための組織が整ったら、首相に提案し、承認を求める予定である。その後、各政党の代表を招集し、議論を進める前に同委員会の会議を開催する予定である」と述べている。プラウィットの政治手腕は、特別に注目に値する。プラウィットは、タイ貢献党であろうと民主党であろうと多くの政治家との豊富な人脈を有し、赤シャツ、黄シャツの政治運動グループとさえ人脈を有する軍人であることを忘れてはならない。
まだ正式に着手していないというのに、政治家達は、これまでの試みでの批判的な意見とは異なって、今回は明確に好意的な反応を示している。従って、NCPOが成功する可能性は高い。国民和解を成功に導くための重要な要素は、「時間と状況を強制される」ことであった。何故そのようなことを言うかといえば、国民和解に向けた動きは、NCPOの運営下の最後の時期に差し掛かって、やっと現実的になってきているからである。NCPOは、政権運営の終わりを迎える前に具体的な成果を残しておきたいのである。これは、農民達の言葉を借りて言えば、「最終列車」である。今回こそは、不正汚職事件と刑法第112条不敬罪以外の訴訟・刑罰を抱えている全ての関係者にとって、NCPOが主導する国民和解プロセスによって、刑罰を軽くする乃至は帳消しにするための最後の機会である。明確なことは、国民和解に向けての今回の列車は、本当に最終列車であることである。NLAが「政治犯の公正処遇に関する法案」を政府に提案したことから、もう逃げることは出来ない。政府は、これまでのように時間稼ぎをするのではなく、本気で取り組むことを示している。なぜ政治家達が今回は国民和解に向けて好意的な反応しているのか不思議だと思う必要はない。それは、この最終電車に乗り遅れたら、もう次の機会は残されていないからである。