タイラットは、「セットゼロ・誰が得して、誰が損する」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
憲法起草委員会が240日以内に憲法付属法令10本の検討を終える予定になっているが、その中でも総選挙の実施に必要な4本の法令の起案を先に完了し、国家立法会議に送付し、60日以内に検討を終える予定となっている。その4つの法案とは、下院議員選挙法、上院選出法、政党法、選挙管理委員会法である。
下院議員選挙法に関しては、特に売買票に関して、立候補者に葬式や結婚式などの各種仏教儀式への寄付を禁じるなど、数多くの提案がなされている。これに対しては、政治家側からは、これらの行為が長くタイ社会で続いている親交のための文化的な行為であるとして反対意見が出ている。これまでの立候補者、政治家が通常に行っていた行為であり、これらは「社会的支出」として考えられてきた。しかし、このような行為は、集票活動と区別することは難しく、むしろ集票活動、買票行為の一部であると見られている。この問題については、よく検討しておく必要があるということに、とりあえずしておこう。
もう一つ、よく話題になっていながら、未だに明確になっていないことは、憲法起草委員会が政党法を新規に起案し直すのかどうかである。それによって、現在の全ての既存政党が解散され、新規に再度登録し直さなければならなくなる「セット・ゼロ」が実施されるかどうかである。仮に憲法起草委員会が、これを開始すれば、全ての既存政党が新たに登録からやり直しになり、政党名を決め、党員を募集し、党首を決め、役員を決める等々の手続きをしなければならない。当然ながら、全ての政党にとって、有利、不利にならないように平等に最初から登録し直しになる。
新規に設立される政党には、何の問題にもならないが、古くから設立されている政党は、各政党によって、その影響の幅は異なるが、即時に問題を抱えることになる。特に大きな政党ほど、小さな政党よりも大きな問題を抱えることになる。民主党が最も大きな影響を被る。よって、民主党は、提案が異常であり、政治ゲームに過ぎないと反対をしている。同様に、もう一つの大政党であるタイ貢献党も、これが同党を不利にさせ、NCPOを支援する政党に利益を与えるためのものと見ている。結局のところ、二大政党が最も大きな問題を抱え反対しているが、他方で中小政党は反対をしていない。なぜなら、特に問題にはならないし、それどころか利益の方が大きいからである。
実際のところ、タイ貢献党にとっては、それほど大きな問題にないだろう。なぜなら、これまでもタイ愛国党から、国民の力党、タイ貢献党へと何度も政党名を変更してきたが、それでも党運営することが可能であったからである。どのような政党名になろうと、タクシンが象徴の政党である。よって、最も問題を抱えるのが最も歴史の古い民主党となる。民主党の象徴である「民主」は、政治家の名前ではない。もし、誰かが自分の政党名に「民主」と名付けて登録しようすれば、問題が生じることになる。