ポストトゥデイ・オンライン版は、「PDRCと民主党は国民投票を分かれて進む」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下の通り。
アピシット民主党党首が、国民の権利、汚職対策、国民対立の問題を解決できないことを理由に挙げ、憲法草案に反対であるとの立場表明を行った。もし憲法草案が国民投票で否決された場合には、プラユット首相兼NCPO議長が自らが主導して、以前に国民投票で承認された2007年憲法に基づいて、それを修正するような形で、新しく憲法草案を起草し直すことを提案した。
この立場表明に関し、賛否が分かれている。アピシット党首が、憲法草案に賛成するにしろ、反対するにしろ、それに同意するグループと反対するグループがいることは、現在の社会対立の状況下では普通のことである。注目すべき点は、調整するのが困難な程、PDRCと民主党の関係が分裂していることである。ステープ・トゥアクスバンPDRC幹部は、毎日、フェイスブック上で憲法草案のメリットを賞賛することで、賛成の立場を明確にしている。他方、アピシットの立場は、憲法草案はデメリットの方がメリットよりも多いと見ている。
アピシットの立場表明は、単なる民主党党首の個人的な立場であり、党としての決定ではなく、民主党員を厳格に拘束するようなものではないものの、オンアート・クラムパイブン副党首は、党首による立場表明は、党の決定に近い性質のものであり、民主党の慣習としては、党員はそれに従うべきものであると見ている。重要なことは、アピシットは当初より、単なる個人ではく、1946年結党時以来の民主党の理念に基づき、党首の立場での立場表明をしたのであった。曰く、「好きではないとか、個人的に好まないとかではない。この立場表明は、民主党の重要な理念に基づくものであり、タイの未来への答えを追求したものである。憲法草案の内容がタイに相応しいものであるかという基準で、賛成するか反対するか検討したのである」と。
問題はPDRC派の民主党員である。多くの人が、PDRCと民主党の関係を強調し、党首の立場表明は自分には興味が無いとの立場を示していた。ターウォン・セー二アムPDRC幹部は、「しっかりと検討し、憲法草案に賛成することを表明した。意見の異なる民主党党首及び党員の立場を尊重しつつも、この憲法草案はタクシン体制による民主主義の問題を解消することができると信じている。自分は未だに同様に民主党の理念を持ち続けている」と語った。これは、ステープの息子のシェーン・トゥアクスバンのフェイスブックの投稿、「アピシット氏は良い事を言っている。理由もある。これを聞かなかったタイ人は勿体ない。賛成しても、反対しても、潮流に従って、罵倒するものばかりである。もし自分がアピシット氏だったら、民主党党首から辞任し、政治活動を止め、国連なりWTOなりの国際機関の仕事に行く」と一致している。
他方で民主党員(党首派)は、アピシット党首の立場表明を支持する動きがみられる。ピチェート・パンウィチャーティクン元クラビー県選出下院議員、オンアート・クラムパイブン副党首、二ピット・イントラソムバット副党首、ブンヨーット・スクティンタイ元比例選出議員、ラチャダーポン・ゲオサニット元比例選出議員、ナット・バンタッタン元バンコク選出下院議員、オンアノン・ガーンジョンチューサック元バンコク選出下院議員、ラチャダー・タナディレーク元バンコク選出下院議員は、揃ってフェイスブックにアピシット支持の意見を投稿した。またチュアン・リークパイ顧問団長さえも、アピシットの決断を応援している合図を送り、民主党内の亀裂を目立つようにさせている。そして、この亀裂は、将来どのくらい修復できるのか分からない。
今回のアピシットの立場表明後、以前よりも憲法草案が否決されるリスクが高まったことは違いない。たとえ数百万人もいる全ての民主党員ではないにしても、少なくない数の党員が今回の立場表明を民主党の理念に沿ったものであると見るようになった。タイ貢献党、UDD、NGO、「心配する市民ネットワーク」の憲法草案への反対の声と合わせると、8月7日の国民投票を不確実にさせるには十分である。