トンナムのタイ政治経済研究室

タイ政治の解説、分析などを中心としたタイ研究の専門家によるブログです。

政治のデッドロック状況に関する評論記事

マティチョン版は、「アピシット民主党とタイ貢献党の態度から生じた政治のデッドロック」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 NCPOとプラユット首相にとっての自信の源は、(任命制の)上院議員250人を掌中に収めていることであるが、それよりも自信を最も左右することになるのは下院議員(過半数の)251人(を確保出来るかどうか)である。それこそが政治を大きく行き詰まらせて(ロックして)いるのである。NCPOとプラユット首相にとって未だに明確でないことは、支配下にある251人の下院議員を確保できるかどうかである。それまでは、ひたすらと(選挙を)延期し、引き延ばし続けるのである。下院議員選挙法案を国家立法議会(NLA)の委員会及び本会議を通過させるべく努力したようにみえたが、他方で同法案を憲法裁判所に対する(違憲審査の)申し立てを促したようにも見える。251人の下院議員の確保の可否が重要な要因となっているのである。しかし、問題は、タイ貢献党、民主党以外どこの政党がそれほどの議席を獲得できるのかである。それは困難という域を超えてしまっている。

 民主党は、突然にも「党是」として、党首が誰であろうと党首を首相候補に提案しなければならないと表明した。これは、(民主党内のプラユット支持勢力への)「妨害」(カットアウト)を意図したものである。アピシット党首は、「プラユット首相の続投を支持するのであれば、離党して他のところ行き、民主党内に留まるべきでない」と主張している。感情を隠せないほどに怒りを募らせながら回答をするほどであった。こうやって民主党の「原理原則」を持ち出すことは、(民主党内のプラユット首相続投支持派の)「夢を潰す」ことである。民主党内の一部の勢力は、PDRCとの関係を有しているので、PDRCが以前に脅しをかけてきたのと同じように、脅迫じみた怒りを爆発させたのであった。

 ここで1978年(仏暦2521年)憲法草案にまで遡らなければならない。同憲法草案は、ミーチャイ・ルチュパンのような法律専門家の巨大な頭脳から「半分の民主主義」を生み出すために起案されたものであったが、憲法起草グループは、後に1997年憲法やタイ愛国党によって反映されることになる政治の現実を見過ごしていた。政治の現実は、2001年1月の総選挙から元に戻れないほど変わってしまった。2005年2月の総選挙でタイ愛国党が勝利したこと、2007年12月の総選挙で(後継の)国民の力党が勝利したこと、2011年7月の総選挙でタイ貢献党が勝利したことから確認されるように、基本的に政党政治は、二大政党制に収斂したのであるが、実際には大政党と呼べるものは、タイ愛国党、(その後継の)国民の力党、タイ貢献党しか存在しない。他方でその他の政党は民主党であっても、地域政党に過ぎず、さもなくば県レベルの政党に過ぎないのである。従って、タイ貢献党と対抗して下院の251議席を確保することは、非常に困難なことなのである。

 タイ貢献党が野党に留まり、「外部首相」(ナーヨックノーク)を拒絶することを表明したことで、政治のデッドロック状況に陥ってしまったのである。その結果、NCPOは身動きが出来なくなったのである。タイ貢献党と民主党を除外して、どこかの政党が100議席ないし200議席を有して、プラユット首相の続投を支持してくれることは困難なことである。以上のような理由により、総選挙実施のロードマップが不明確となっているのである。

ティラキアットのプラウィット副首相批判に関する評論記事

マティチョンは、「ロンドンの音声クリップはウィン・ウィンの結果に。誰にとってのウィン・ウィンか」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 BBCタイが報じたロンドンでのティー医師(ティラキアット教育相)の音声クリップ問題は、スムーズかつ行儀良く片付いたかのようである。ティー医師が「謝罪」の言葉を述べ、今後も教育大臣に残留することになり、誰も閣内から辞任しないことになった。ティー医師が無礼を認め、プラウィット副首相兼国防相がティー医師の謝罪の言葉を容認したことで、誰も「損害」を被らなかった。第5次プラユット内閣から第6次プラユット内閣へ改造しなければならない可能性がなくなり、改造の必要性もなくなった。つまり、全ての関係者にとって「ウィン・ウィン」状況となったのである。

 しかし、ティラキアット医師であろうとプラウィット副首相兼国防相であろうと誰も「損害」を被らなかったというのは真実だろうか。誰にも汚点を残さなかったというのは真実だろうか。ではなぜティー医師に投げかけられたような(辞任しないのかという)質問が出てくるのか、なぜコンチープ国防省報道官は、プラウィット副首相兼国防相が辞任しないことを確認する記者会見を開かなければならなかったのであろうか。それは、ティー医師の発言に拠っている。ティラキアット医師の(音声クリップ内での)発言を要約すれば、(プラウィット副首相兼国防相の)「時計」の問題を例示しながら、政治家の「倫理」に関する繊細な問題に触れていたことが明確であった。プラウィット副首相兼国防相であろうとティラキアット教育相であろうと、辞任しなければどちらも「発言」で言及された批判の対象に該当する。

 BBCタイによって公開された当該音声クリップの詳細を振り返ってみれば、全ての内容が「嘲笑」であったことは明白である。要するに「時計」問題を嘲笑する発言であった。この発言によって、(倫理的に)あるべき行動をとらなかった嘲笑の標的となった人物(プラウィット副首相兼国防相)も損害を被り、(倫理的に望ましい)あるべき行為を実際に行わなかった発言者(ティラキアット教育相)自身も「良いのは口だけ」として、損害を被ったのである。

 今回の両者の間の衝突を中立的な立場からみて、理解しようとすれば、その結果は「成功」であったように見える。何の「成功」であろうか。それは、意見相違や内部対立を反映した問題を単に「無礼」という問題にすり替えて、亀裂を埋めることに成功したことである。これは、より大きな問題を生じさせることで、問題を解消しようということである。

 プラウィット副首相兼国防相の態度は、謝罪を受け入れたことを何も語らないか、または喉が痛いと理由をつけて語ろうとしない。この点については、各自が著しく異なった態度を取っている。プラウィット副首相兼国防相の役割をみても、ティラキアット教育相の役割をみても、(権謀術数の政治対立を描いた著名な中華圏の小説の)「秘曲:笑傲江湖」(タイ語:ユタチャック)の世界のようである。「真の男は、伸びることも縮むことも出来る」(前言を翻して態度を豹変させること)。ここで生じる疑問は、政治的に何のために「伸びることも、縮むことも出来る」ようになるのかである。

デモ対応に関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「集会封じは混乱の燃料を注ぐこと」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 NCPOを苛立たせる運動を実施したデモ隊に対する法律に則った処置は、NCPO政権にとっての「成功の公式」と呼ぶことができるだろう。先日1月27日にパトゥムワン交差点スカイウォークにおいて実施された集会「選挙実施を求める国民による集い:NCPOによる権力継承への反対の力を示そう」への対処は、「火事が拡大するのを防ぐために木を切り倒す」(タットファイ・テー・トンロム)であった。ブリン陸軍大佐・陸軍司令部付担当官がNCPOから委任され、NCPO法律執行チームのリーダーとして、急いで上記集会を実施した学生及び運動家に対する刑罰を求める告発の手続を実施したことも奇妙なことではない。

 容疑がかけられた7名は、①ランシマン・ローム、②シラウィット・セーリーティワット、③ナッター・マハッタナー、④アーノン・ナムパー、⑤エカチャイ・ホンガンワーン、⑥スクリット・ピアンスワン、⑦ネティウィット・チョーティパットパイサーン、である。容疑は、①NCPO議長命令2015年第3号違反:5人以上の集会禁止、②刑法第116条による煽動罪であり、現在、首都警察パトゥムワン警察署が上記7名に対する出頭命令状を発付し、2月2日に出頭し、捜査当局との面会を命じられている。

 上記のような活動は「観測気球」(ヤン・クラセー)であり、世論を喚起することが出来るかどうか、運動の方向性の人気度を計測するためのものである。2月10日に計画しているラチャダムヌン通りでの集会も結束度を測るためのものである。NCPOは、もし今後このような活動を何も対処せずに放任すれば、継続的に集会を発生させることになりかねず、これが定着し、(国民から)支援されるようになれば、拡大を招いて最後には統制することが困難になると見ている。決心の「堅木」(マイケン)を折ることは、「鶏を潰して猿に見せつける」(チュアットガイ・ハイリンドゥー)ことであり、つまり活動を行った者達を「見せしめ」にして、厳罰から逃げられない恐怖によって、今後に同じ行動を取ることを怖じ気づかせることである。

 重要なことは、集会のリーダー達の多くは、「古傷」を持っていることである。例えば、通称「ジャー・ニュウ」ことシラウィット・セーリーティワット氏は、シンボル的な政治演劇と活動を行って、裁判所の職権を侵害したとの容疑で以前にコンケン県裁判所から禁固6ヶ月の判決が下されているが、再び政治活動を行わないとの条件で執行猶予2年で実刑を免れている。今回の条件違反は、執行猶予中のジャー・ニュウに実刑を受けさせることになるかもしれない。こうしたことにより、NCPOが絶対的権力を手中に掌握している期間中は、古傷を持つ多くの運動家がリーダーになることを怖じ気づかせることになる。既に4年近くになるが、NCPO議長命令により政治集会が封じられているだけでないのである。

 現在の政治の状況と雰囲気は、2014年のクーデター発生直後にタイ社会がNCPOに国家改革、国民和解に向かって進むための機会を与えて期待していた頃とは異なっている。既にNCPOには3年以上の機会を与えてきたが、未だにタイを問題の循環状況から脱する方向に導けたとは思われていない。単に総選挙の実施を延期させる合図が継続的に発せられているだけであり、権力の座に居る期間を引き延ばそうとしていると批判に晒されている。

 国民の平和的な運動を封じ込めるために権力を行使することは、「ブーメラン」のようにNCPOが予想していなかったような圧力を自身に加えることになるかもしれない。それは第1に、今回の政治集会で要求している目標は、今年中に総選挙を実施させることである。それは、そもそも政府自身が発表していた日程であり、運動を実施するために十分な理由と正当性があった。諸外国は、NCPOに今年中に総選挙を実施するように要求する活動を十分に正当性があることと見ており、それに合わせ、米国とEUがタイ政府に対して予定通り年内の総選挙実施を要求している。

 第2に、当該活動はNCPO議長命令に影響を及ぼすとはいえ、憲法で保障された表現の自由に基づく権利であり、主権者たる国民の立場として認められるべきものであろう。暴力的な事態が発生しそうになく、治安上の影響がないような状況下で、NCPOが運動を封じ込めるために権力を行使することは、行き過ぎた行為であり不適切であろう。現在、様々なグループがNCPOに対して様々な活動を実施できるようにし、総選挙の実施に向けてNCPO議長命令を解除するように要求している中、NCPO議長命令を適用し、総選挙の実施を要求しているグループの活動を封じ込めようとすることは、NCPOにとっても良くない結果を招くことになる。

 学者ネットワーク「People Go Network」によるバンコクからコンケン県に向けて運動の「友好We Walk」への対処の仕方も同じようなものであった。様々な問題への対処を要求し、解決策を提示しようという学者の人々による活動であるが、彼らは、これまでに支配者へのリスクになるような運動を行っていない。しかし、8人の運動の指導者とネットワーク参加者に対して、当局は刑事処分をすべく告発を行った。その後26人の学者達が、国民の権利に基づく同グループの活動を妨害しないように要求する声明発表を行った。NCPOは、「火事が拡大するのを防ぐために木を切り倒す」ことを選択したので、一滴の蜂蜜を手に入れたが、これは将来に混乱を激化させることになる。

上院選出法案に関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「上院選出法案を頓挫させ、総選挙の実施を延期させる隠さないゲーム」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。


 国家立法議会(NLA)が、下院議員選挙法、上院議員選出法、政党法、選挙管理委員会法の総選挙の実施に必要な選挙関連の4つの憲法付属法案の全てを可決したにもかかわらず、現在の政治状況は、タイはいつになったら総選挙を実施するのか、という大きな疑問が沸き上がってきている。


 そのような疑問が生じる要因の第1は、NCPOからの「要望に応える職人」である憲法起草委員会(CDC)が起案した法案からNLAが内容を修正し、下院選挙法の施行日を公布直後から、公布から90日後に変更したからである。この日程の変更により、総選挙実施までの150日間のカウントダウンに進むはずだったのが、その開始前に90日後ろ倒しにしなければならなくなったのであった。しかし、この90日の期間が過ぎれば、総選挙実施までのカウントダウンを開始することが出来る。現在、NLAは、90日間の延期の理由は、NCPO議長命令2017年第53号による政党法改正と一致させることが軍政「5つの河」に必要であったと説明して納得させようとしているが、あまり国民からの理解を得られてはいない。むしろ国民の多くからは、このような修正が生じた要因はNCPO自身であり、既に政党法が施行されたにもかかわらず、政党の活動を容認したくないからであると見られている。


 現在のプラユット首相兼NCPO議長の態度は、「総選挙を実施するとは約束していない」として、1月29日以下のように発言している。「私は約束していない。私は自分の職務を最大限に実行し、ロードマップに沿って行くことを約束しただけである。私はこれまでと同じ約束をしただけである。それが変更になったことなどない。まだ一部のグループが全てを元の状態に戻そうと企んでいるという問題がある。私を取るのか、それとも全てが元に戻ってしまうかを選びなさい」。つまり、プラユット首相は、社会に対して、以前のように政治家による平穏でない民主主義に戻るべきか、それとも完全な民主主義は存在せず、自身がこの先しばらくの期間居座り続けることを望むかと提示して、世論を誘導しようとしているのである。


 この状態が長くなるほどに、(NCPO影響下の)各グループは、手持ちのカードを開示し始めて、この国の支配者(タイ語:プーミーアムナート)が未だにこの国を選挙を通じた完全な民主主義となることを容認したくないことを示そうとしている。現在の状況下での総選挙の実施が劣悪な状況を招くことになること指摘しつつ、法制度と政治メカニズムを道具として駆使するのである。現在、支配者の手の中にある(下院選挙法の90日の施行延期という)カードの他に、上院選出法案という強力で重要なカードがもう一枚残されているのである。


 なぜ上院法案が重要であるのか、そのように分析をしなければならない理由は、ポンペットNLA議長の態度に拠るものである。同議長は1月29日にインタビューに応じて、同法案がNLAを通過できないとの懸念を示し、以下のように述べている。「私も怖い。(NLA上院法案検討)委員会とCDCが良く話し合わなければならない。彼らは『マイペンライ』と言っているが、実際に良く話し合って、相違点を解消しなければならない」。NLAで上院法案が可決されたが、CDCと選挙管理委員会(EC)が、ECとCDCとNLAで構成される3者委員会を設置することを提案するかどうか、回答を待たなければならない。仮にECかCDCが同法案を気にかけなければ全ての手続きは完了するが、もしそうでなければ、3者委員会を設置して、同法案の条文の中身について検討し、問題箇所の修正をしてからNLAに差し戻し、再度の採決を取らなければならない。


 上記の段階でのNLAでの採決は重要である。もしNLAの修正版の同法案への賛成票がNLA議員数の3分の2を下回った場合、つまり249票中の166票の賛成票が得られない場合、同法案は即時廃案となってしまうからである。NLAが否決する可能性があるかどうかと問われれば、可能性があると答えることが出来るだろう。1月26日のNLAでの上院法案の審議の際には、数多くのNLA議員達が上院法案の内容について、議員選出に係る職業グループの分類を15から10に減少させた修正内容に不満を表明し、議論をしていたからである。同法案での上院議員の選出方法について、政治家の介入を防止するような仕組みになっていないと大半の人々が見ており、NCPOは郡レベル、県レベルの選抜をくぐり抜けた200人の候補者の中から50人の上院議員を選出することになっている。NLAの多くの議員達は、国会での審議の際に、同法案の内容では、将来は政治家の介入を受けて選出された上院議員を誕生させることになり、総選挙後の首相の選出の際にも影響が出ること指摘しようとした。


 上記のような事情により、3者委員会後の修正版上院法案の変則的な多数決で否決される結果を導くことになるかもしれないのである。もし、そのような事態が生じれば、上院法案がもう一度最初からやり直しに戻ることになり、そのやり直しに関する明確な期限も定められていない。(注:現行憲法第267条の規定によれば、3分の2を下回った場合は「廃案」となるが、「NLAが特別委員会が提案した法律案を承認したものとみなす」とも記載されている。この規定を政治的に解釈し、NLAが国王奏上に回さないなどの可能性があるとみられる。)この国の支配者が満足し、再度上院法が完成するまで総選挙が延期になるのである。従って、下院選挙法の件は、(総選挙実施延期に向けての)単なる最初のステップに過ぎず、本当の重要なステップは、上院法案の廃案なのである。


選挙実施延期に関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「総選挙実施延期への批判を回避するための予備選挙中止の動きに注目」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 現在のタイ政治、特に総選挙の実施が不透明な状況になっていることが明らかになっている。今後いつ総選挙が実施できるのかはっきりしたものが見えなくなっている。2014年にクーデターが発生した当初、NCPOは国民に対して、職務を遂行し、国家改革を実行するため、長くない、ほんの僅かな時間だけが欲しいと約束していた。プラユット首相兼NCPO議長は、メディアを通じて、仕事に疲れたので、再び(首相の)職務に戻るつもりはなく、国民に主権を返還するとの姿勢を示していた。

 「頭も尻尾も全てがひっくり返った」のは、国家改革会議(NRC)がボーヴォンサック憲法起草委員長が取り纏めた憲法草案を否決した時であった。その後、ミーチャイ・ルチュパンによる憲法草案の起案は全てスムーズに進展し、国民投票で2017年版憲法草案が承認されることになった。2017年憲法が公布されたことは、国民に対して総選挙が実施されることを保証したことに等しい。なぜなら、憲法は、選挙関連憲法付属法である下院議員選挙法、上院議員選出法、選挙委員会法、政党法の4法が施行されれば150日以内に総選挙を実施すると規定しているからである。しかし、現在になって、国家立法議会(NLA)が下院議員選挙法案の施行日を公布後直後ではなく公布後90日に修正をしたことで、国民との合意は意味をなさなくなった。この修正によって、選挙関連4法の公布は、その直後から選挙実施までの150日のカウントダウンが開始されるのではなく、その前に施行までの90日間を待たなくてはならなくなったのである。

 これまでNLA、内閣、NCPOは、同法の公布から施行までに90日を要する理由として、NCPO議長命令2017年第53号によって政党法が改正され、各政党が活動開始できるのが2018年3月又は4月にずれ込むことになったことに対応し、多くの関係者に準備をする時間を与える目的であると説明し、納得させようとしてきた。NCPOが全方位から激しく批判に晒されても、NCPOはそれほど気にかける様子もなく、政治の温度が下がる様子は全く見られない。

 NCPOは、やっと評価が改善しつつあった外国、つまり、米国とEUを裏切ったことになる。タイ国内の大物にとっての商売の相手である。ジルリアン・ボーンナルドース在タイ米国大使館報道官は、「米国の立場は、タイが総選挙を実施すべきということに変わりはない。米国は、首相が国民に対して下院議員総選挙を2018年11月までに実施すると表明したことを歓迎している」と表明した。同様にピヤルガー・タピオラー在タイEU大使は、「未だ2018年11月までに総選挙を実施することは可能であると理解している。全ての利害関係のある者は、これまでにタイが発表してきた民主主義に復帰するためのロードマップを尊重すべきである」と表明した。

 タイ国内の世論は、世界の大国からの意見ほど大きな圧力とはならないであろう。なぜなら、タイ経済は外国にある程度依存しなければならないからである。従って、世界のタイに対する警告は、重要な声なのであり、タイ国内の大物が聞かなければならないのである。そうでなければ、生じる損害をコントロールできなくなるからである。

 世界がタイに警告する時、NCPOは、総選挙実施の延期を出来る限り最小限に留める方法を探そうとしてきた。(今回)なんとか可能な方法として有り得ることは、「予備投票」(プライマリーボート)の実施を見送りにさせることである。政党法によって規定されている予備投票の手続きは、かなり煩雑なものである。各政党は、党員登録、党立候補者の登録が必要なだけでなく、小選挙区では予備投票を経ていない場合は、候補者を擁立することも出来なくなる。これから設立される新党もこれまでの旧政党も今後設立される親軍政党も含め全てにとって予備投票の実施は、時間制約が厳しい中では等しく困難なことなのである。従って、暫定憲法第44条の強権を発動し、予備投票の実施を見送りにすることは、全ての関係者にとって良い解決策なのである。政党にとっての一定の負担を減らすことになるだけでなく、早期に選挙を実施することができ、2019年にまで総選挙を延期にすることがなくなるからである。つまり、全ての人々にとっての「Win-Win」と呼ぶことができるであろう。NCPOも対面を保つことができ、政党は総選挙が早く実施できるのである。

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