ポストトゥデイ・オンライン版は、「選挙監査人を潰し、絶対権力を固める」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。
国家立法議会(NLA)における2017年選挙管理委員会(EC)法改正法案は、些細な動きであるものの、政治に与える影響は少なくない。同改正法案の重要な点は、(2017年EC法で導入された)新しい選挙監査人の選出方法を変更し、バンコク及び各県において、「(選挙監査人)選出委員会」を設置することである。
バンコク都における選出委員会の構成は、①バンコク都次官(委員長)、②最高裁選挙訴訟部長、③最高検察庁代表、④首都警察長官、⑤タイ商工会議所代表、⑥タイ工業連盟代表、⑦タイ銀行協会代表である。他方で各県における選出委員会の構成は、①県知事(委員長)、②県裁判所判事長、③県検事事務所長、④県警察本部長、⑤県商工会議所会長、⑥県工業連盟会長である。
実際のところ、現在施行中のEC法における選挙監査人の選出は、NLAが提案している改正法案での選出プロセス自体には大きな相違点はない。その違いは、「選出委員会」の設置を同法の中で規定するのか、それとも一段階下のEC「規則」により設置させるかだけの差に過ぎない。その「2018年選挙監査人に関するEC規則」では、県知事を県選出委員会の委員長、バンコク都次官をバンコク都の選出委員会の委員長とすることは同一である。
改正法案と現在のEC法の全体像は、ほぼ同一であるものの、36人のNLA議員が僅かな点の改正を提起するために署名したということは、当然に政治的な理由がある。改正法案の条文には、現在の(暫定)ECによる選挙監査人選出のプロセスを頓挫させる内容が見られる。「憲法付属法である本法の施行前に実施された選挙監査人の選出と任命に関するいかなる手続きも本法の施行後には無効となる」と同改正案の第9条に記載されている。上記の第9条は、選挙監査人を選出し直したいというNLAの意図を示している。このような大きな(選挙日程へ影響が出る)ことは、NCPOの大物からゴーサインを得られていない限り、確実に実行することは出来ない。そもそも、この憲法付属法はNLA自身が(憲法起草委員会の提出の法案から)ナイフで切り取って作ったものであることを忘れてはならない。
多くの関係者が選挙監査人の選出を「セットゼロ」にする必要があると主張する理由は、つい先日に選挙監査人に選出された人物達の経歴を調べると、その中の多くの人物が地方政治家や政党と親密な関係にあるために信用できないというものである。また同法では、選挙監査人は選挙及び政党に関する法令違反と不正選挙におけるいかなる違反をも調査する権限を有すると規定されており、「ミニEC」とも呼ばれるため、政党と繋がりが人物が権限を持つことを見逃してはならないことも理由に挙げられている。
今回の提案された改正法案は、当初だけで後で切断される虚偽のものに過ぎないかもしれない。同法案の国会審議の手続きが進んだ最後には、「錬金術」のように軍が選挙監査人の選出に関与するように内容が変更になっているかもしれない。NLAが以前に東部経済開発特区法の改正を行った際に、最後には国防大臣が東部経済開発特区政策委員会に追加されたとの同じようにである。この手駒の進め方は、あらゆる手段を用いて政党を封じることを望む権力者による「将棋」なのである。