ポストトゥデイ・オンライン版は、「総選挙実施延期への批判を回避するための予備選挙中止の動きに注目」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 現在のタイ政治、特に総選挙の実施が不透明な状況になっていることが明らかになっている。今後いつ総選挙が実施できるのかはっきりしたものが見えなくなっている。2014年にクーデターが発生した当初、NCPOは国民に対して、職務を遂行し、国家改革を実行するため、長くない、ほんの僅かな時間だけが欲しいと約束していた。プラユット首相兼NCPO議長は、メディアを通じて、仕事に疲れたので、再び(首相の)職務に戻るつもりはなく、国民に主権を返還するとの姿勢を示していた。

 「頭も尻尾も全てがひっくり返った」のは、国家改革会議(NRC)がボーヴォンサック憲法起草委員長が取り纏めた憲法草案を否決した時であった。その後、ミーチャイ・ルチュパンによる憲法草案の起案は全てスムーズに進展し、国民投票で2017年版憲法草案が承認されることになった。2017年憲法が公布されたことは、国民に対して総選挙が実施されることを保証したことに等しい。なぜなら、憲法は、選挙関連憲法付属法である下院議員選挙法、上院議員選出法、選挙委員会法、政党法の4法が施行されれば150日以内に総選挙を実施すると規定しているからである。しかし、現在になって、国家立法議会(NLA)が下院議員選挙法案の施行日を公布後直後ではなく公布後90日に修正をしたことで、国民との合意は意味をなさなくなった。この修正によって、選挙関連4法の公布は、その直後から選挙実施までの150日のカウントダウンが開始されるのではなく、その前に施行までの90日間を待たなくてはならなくなったのである。

 これまでNLA、内閣、NCPOは、同法の公布から施行までに90日を要する理由として、NCPO議長命令2017年第53号によって政党法が改正され、各政党が活動開始できるのが2018年3月又は4月にずれ込むことになったことに対応し、多くの関係者に準備をする時間を与える目的であると説明し、納得させようとしてきた。NCPOが全方位から激しく批判に晒されても、NCPOはそれほど気にかける様子もなく、政治の温度が下がる様子は全く見られない。

 NCPOは、やっと評価が改善しつつあった外国、つまり、米国とEUを裏切ったことになる。タイ国内の大物にとっての商売の相手である。ジルリアン・ボーンナルドース在タイ米国大使館報道官は、「米国の立場は、タイが総選挙を実施すべきということに変わりはない。米国は、首相が国民に対して下院議員総選挙を2018年11月までに実施すると表明したことを歓迎している」と表明した。同様にピヤルガー・タピオラー在タイEU大使は、「未だ2018年11月までに総選挙を実施することは可能であると理解している。全ての利害関係のある者は、これまでにタイが発表してきた民主主義に復帰するためのロードマップを尊重すべきである」と表明した。

 タイ国内の世論は、世界の大国からの意見ほど大きな圧力とはならないであろう。なぜなら、タイ経済は外国にある程度依存しなければならないからである。従って、世界のタイに対する警告は、重要な声なのであり、タイ国内の大物が聞かなければならないのである。そうでなければ、生じる損害をコントロールできなくなるからである。

 世界がタイに警告する時、NCPOは、総選挙実施の延期を出来る限り最小限に留める方法を探そうとしてきた。(今回)なんとか可能な方法として有り得ることは、「予備投票」(プライマリーボート)の実施を見送りにさせることである。政党法によって規定されている予備投票の手続きは、かなり煩雑なものである。各政党は、党員登録、党立候補者の登録が必要なだけでなく、小選挙区では予備投票を経ていない場合は、候補者を擁立することも出来なくなる。これから設立される新党もこれまでの旧政党も今後設立される親軍政党も含め全てにとって予備投票の実施は、時間制約が厳しい中では等しく困難なことなのである。従って、暫定憲法第44条の強権を発動し、予備投票の実施を見送りにすることは、全ての関係者にとって良い解決策なのである。政党にとっての一定の負担を減らすことになるだけでなく、早期に選挙を実施することができ、2019年にまで総選挙を延期にすることがなくなるからである。つまり、全ての人々にとっての「Win-Win」と呼ぶことができるであろう。NCPOも対面を保つことができ、政党は総選挙が早く実施できるのである。