ポストトゥデイ・オンライン版は、「NACCへの信頼性の危機:過去の轍を繰り返す」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 国家汚職防止委員会(NACC)は、1997年以来の長い歴史を持つ独立機関の一つである。その設立の目的は、行政の干渉から独立し、汚職防止、取締りの中心組織となることであった。これまでの約20年間でNACCは、上昇と衰退を経験してきた。なかでも2006年以前のNACCは、当時のNACC委員が職権濫用し、自らの報酬額を引き上げたことが不正に当たるとして、最高裁政治職者刑事訴訟部から各委員に2年間の禁固、執行猶予2年の有罪判決が下されている。NACC委員は、実際に刑務所に収監されることはなかったが、この判決の結果、NACC委員が不在となり、その後、NACC不在の真空状態を招いた。2006年当時、上院は相応しい人物を後任のNACC委員に選出しようとしたが、選出委員会が適任の候補者を指名すると候補者は自ら辞退を申し出たので、成功しなかった。右往左往している間にクーデターが発生し、その年内に9人のNACC委員が一挙に任命された。

 2006年から現在に至るまで、NACCは、タイ社会の癌である汚職を切除することの助けになると大きな信頼が置かれており、確かに多くの案件で社会に輝きを与えた。しかし、一方でNACCは他の数多くの案件には着手することができず、社会から疑惑の目で見られている。タイ貢献党政権によるコメ担保融資制度に関する事案は、明白な一例であろう。NACCは、この案件を最高検察庁及び最高裁に送付し、最終的に審議終了にまで導いた。他方で、民主党政権によるコメ価格保証制度に関しての汚職追及は、未だほとんど進捗が見られないままである。またコメ担保融資制度案件以前に発生した案件についても同様に進捗は見られない。このような理由により、NACCには、職務遂行の姿勢について明確さが欠如しているのではないかとの疑問が常に投げかけられている。

 2014年クーデター以降、NACCは再び大きな転換点を迎えた。これまでのNACC委員が任期満了となり、新しいNACC委員が選出となったからである。そして新しいNACC委員の一人として選出されたのが、ワチャラポン・プラサーンラーチャキット警察大将であった。単に委員に就任しただけでなく、結局、NACC委員長に就任した。ワチャラポンのNACC委員長就任は大きな注目を集めた。なぜなら、それ以前には、プラウィット副首相兼国防相付の政治担当首相副秘書官長を務めていたからである。


 現在、プラユット政権の不透明性に関する案件が数多くNACCに訴えられており、それ以降、NACCは、社会に対して行政から独立しているとの姿勢を見せようと努めているが、現在までのところ、この努力は、あまり成功しているとは言えない。特に最近のプラウィット副首相兼国防相の高価な時計が政治職就任時にNACCに提出する資産報告書に掲載されていなかったという疑惑について、NACCの対応振りは、良くないものであった。プラウィット副首相兼国防相が疑惑についての説明する書類を提出した他に、本人から一部の事情について直接説明を受けたにもかかわらず、その詳細について一般に開示しようとしなかった。NACCは、マスコミからの質問を避けるために、「未だ調査中の段階である」との理由を挙げたが、その姿勢は、これまでのNACCがコメ担保融資制度への追及などで、訴訟に影響を与えない範囲で、資金の流れについて出来る限りの情報を開示してきたことと大きく異なっている。調査への影響を避けるために案件の詳細開示の拒否は法律に基づくNACCの権限であるが、忘れてはならないことは、本件については、国民の注目が集まっているということである。NACCが隠そうとすればするほど、NACCがダメージを受けることになるのである。

 現在までにNACCは、もう一つの信頼性の危機にも直面している。それは、国家立法議会(NLA)で採決された憲法付属法国家汚職防止法で「セットゼロ」(委員の失職)の処分を受けないという温情を受けたばかりだからである。これにより、NACC委員全員は、新国家汚職防止法で定める委員の規定を満たしていない場合でも特例として、任期満了までの「査証」の延長が認められた。セットゼロの処分を受けず、また任期のカウントし直しによる任期の延長を受けることで、NACCはかなり苦しい立場に追い込まれることになった。NCPOが権力の座から下りる際に、それを受け止める「緩衝材」となったと見られるようになったからである。もし、NACCがNCPOの案件を検討しなくてはならなくなれば、過去と同じような問題に直面することになるのである。現在、NACCは、国民からどのように調査をするのか注目されており、本当に独立しているのか、支配、管理しようとしてくる「見えない手」から逃れられているのかを証明しなくてはならないという大きな課題に直面しているのである。