マティチョンは、「敵陣営に対処し、味方陣営にも対処する:政府の宿題」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 火曜日(16日)の閣議決定は非常に興味深い。まず第1に、内閣が1500億バーツの予算を承認したことである。1500億バーツの内1000億バーツは借款で、残りの500億バーツは税収で賄われる予定である。この予算について、政府は、村人達(チャオバーン)に関わる農業や村落基金などを含む「基礎」(ターンラーク)経済を刺激すると説明している。そして第2に、プラユット首相が閣僚と協議し、「貧困解消推進委員会」を設置したことである。この点について、コープサック首相府相は、この委員会は、プラユット首相を委員長とし、副首相全員が副委員長を務め、経済閣僚が委員を務めると説明する。特に興味深い点は、貧困解消もしくは格差解消のための推進方法として、全国のタンボン(行政区)とテサバーン(市自治体)の総数に合わせ、7463のチームを設置して実行する点である。 

 政府は1500億バーツのプロジェクトを実施するための資金を入手しただけでなく、全国全てのタンボン、テサバーンの政府職員がこれら予算を執行してくれるのであり、「集票代理人」(エージェント)も入手したに等しいのである。更に、プラユット首相は閣僚を引き連れてメーホンソン県を訪問し、住民達に対して、甘い言葉をばらまき、仕事を与え、冗談で笑わせてみせる。これら全ての行動は、「政治家らしい」振るまいであり、住民からの集票行為である。政治家の道に進んで成功するためのものである。

 他方でプラウィット副首相兼国防相は、「時計問題」について、ようやく口を開き、友人から借りてはめていた腕時計は全て友人に返却済みであると説明し、自信あり気な顔で、微笑みながら、「もし国家汚職防止委員会(NACC)が違法であると認定すれば、喜んで辞任する」とまで述べた。これは、プラウィット副首相を追い回し、最初から友好的でないグループに対する合図である。しかし、これらグループが以前に報道されたグループと一緒であるのか不明である。これまでの報道では、「プラウィットに危害を加えようとする動きがある」とされていた。その報道が真実であったのかどうかは検証が必要である。

 また他方で、憲法起草委員会(CDC)と国家立法議会(NLA)でも動きがあった。ミーチャイCDC委員長は、ポンペットNLA議長に対して、(NACC法案による)現在のNACC委員が「リセット」されず、再任・任期延長となる問題について、憲法裁に判断を仰いで問題を解消することを提案した。その後、NLA25人以上が署名し、この点について憲法裁に送付することを要求した。そもそも同法案のNLAでの採決を振り返れば、数十人のNLA議員が、「リセットなし」を支持していなかった。NLAの反対に回った議員の数は、思想の「亀裂」を反映したものである。これまでNLAは、ほぼ100%賛成で採決をしてきたが、今回は反対票や棄権票が投じられたのであった。

 時計問題も(NACCの)「リセットなし」問題も政府が対処しなければならない課題である。つまり、敵陣営に対処するだけでなく、味方陣営にも対処しなければならないのである。プレム枢密院議長から伝えられた年末挨拶の際の警告の言葉が現在実際に起ころうとしている。つまり、政府の支持者が尽き果てようとしているのである。従って、政府はますます警戒をしなければならなくなっている。