イサラニュースは、マレーシア・ケランタン州内でBRN関係者と思われる人物達が逮捕された事件につき解説記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 1月15日、マレーシア・ケランタン州の警察当局は、タイ側ナラティワート県の対岸のケランタン州パシルマス地域の家屋において爆弾の部品を所持していた容疑者達を逮捕した。 逮捕されたのは6名で押収された物品には、爆弾導火線、バッテリー、爆弾原料各種が含まれていた。マレーシア警察当局は、逮捕された容疑者達はイスラム国(IS)との関係がある可能性があるとみている。

 警察が捜査した村は、パロール、ラヤー、ポホーン、ブーロ、メーアランティーであり、その中の5軒の家屋から①サーユティー・ビンハーロン33歳、②サーイ・ビンアーリー43歳、③サーガーリヤー・ビンヌー40歳、④マロービー・ビンダーミ47歳の4名を逮捕した。彼らは、出生地を示す書類を保持していなかった。その後、当局はグーレーマス村にも捜査を拡大し、1軒の家屋から⑤マロースーディー・ビンマリー50歳、⑥サイプーラオ・ビラニコアブドゥラシス26歳の2名を逮捕した。2名とも出生地を示す書類を保持していなかった。

 上記2カ所の捜索の結果、押収された物品は、化学薬品容器(塩化ナトリウム、過酸化水素、エタノール、硫黄、硝酸カリウム、黄色ワセリン)、プリント基板352枚、電気スイッチ4個、使用可能な集積回路14枚、赤黒銅線9.6メートル、無線機と充電器2セット、双眼鏡1個、ノキア、サムソンなどの安価な携帯電話5個、電子回路に関する書籍1冊であった。

 タイの深南部治安機関の関係者によれば、ケランタン州のパシルマス地域は、タイ深南部国境地域の武装勢力が潜伏し、活動している地域である。これまでにもナラティワート県タークバイ郡での武装勢力の実行メンバーが同地に逃亡して、グレンマス地区のポノ(イスラム学校)に居住しながら、自然国境を通じてタイ・マレーシア間を出入国を繰り返し、タクバイ郡及びスンガイコーロク郡で活動していたことが判明している。グレンマス地区は、マレーシア当局から今回も捜査を受けている。治安当局関係者は、逮捕された6人は、タイ深南部武装グループのネットワークであると思われるが、逮捕された際にマレー名を名乗っており、タイ側が保有するデータベースと照合出来ないと述べた。マレーシア当局が押収した物品は、手製爆弾を準備していたものと思われ、ナラティワート県付近での使用を想定していたと考えられる。

 ある噂によれば、ケランタン州警察当局が逮捕した6人の容疑者の情報は、タイ政府に報告され、タイ側公安警察がマレーシア警察との間で、タイ側に身柄を引き渡しタイで法手続実施するため連絡調整しているという。この6人の一部ないし全員は、BRNのメンバーであり、そのうち一人は、ヤラー県を管轄しているリーダー格であるとの情報がもたらされているからである。今のところ、マレーシア公安側からの反応はない。なぜならマレーシア政府は、本件を大きな出来事であると考えているからである。そのため、これまでに彼らを逮捕したとの発表もしていない。マレーシア治安当局は、イスラム国(IS)との関係も疑っている。またこれ以外に先月、タイ深南部の独立を求める運動をしている指導者とその妻が逮捕されている。彼らは、フィリピンでの活動を支援しており、同じくISとの関係が疑われている。このグループは、マレーシア当局が便宜を図ってタイ政府と和平対話を続けている統括団体(注:マラーパッタニーを指していると思われる)の傘下団体として名前を連ねている。このような理由により、マレーシアの治安にとって非常にセンシティブな問題となっているのである。BRNの幹部達は、マレーシアに居住し、マレーシア公安当局との関係を有しているので、6人の容疑者の身柄釈放に向けて努力をしているが、マレーシア公安当局は回答をせず、BRN側は現在の状況を懸念している。

 タイ深南部治安機関関係者は、タイ国内で法手続を進めるために容疑者達の身柄引き渡しをマレーシア側に要請しても、マレーシアがそれに応じることは難しいと予想している。2009年12月にも大量の爆発物部品や銃弾を所持していたタイ深南部出身の3人の容疑者(中にはタイの裁判所から逮捕状が発付されていた者も含まれる)をケランタン州内で逮捕したが、マレーシア当局は、身柄の引き渡しには応じなかった。その3人は、マーハマシディ・アーリー、マーマコーイリー・スーメー、マユーニット・ジェードーロの3人であり、これらの者は起訴されたが、後にパシルマス裁判所にて公訴が棄却され、釈放されている。