ポストトゥデイは、「コンピューター法:NCPOにとっての大きな時限爆弾」と題した評論記事を掲載しているところ概要以下のとおり。

 最終的に国家立法議会(NLA)は、第3読会で賛成168、棄権5でコンピューター法案を可決し、公布・施行を待つだけになった。これは、大きな「時限爆弾」のピンを引き抜いたことになる。NCPOの安定性をどれ程揺るがすほどの威力があるのか今後に注目していく必要がある。

 コンピューター法案が閣議了承を経てからNLAの議題に上るまでの間に徐々に反対の声が盛り上がってきた。反対運動は、コンピューター法案をNLAの議題から取り下げることを要求していたが、法制化の動きを止めるだけの十分な力を持ち合わせていなかった。コンピューター法の内容は、表現の自由の権利侵害と見られており、いくつかの問題点について修正が要求されてきたが、修正はされないままであった。

 治安とNCPOの安定性に影響を与えないため、当初、NCPOは、規則及び命令を厳格に適用し、全ての政治集会、デモを封じてきた。これが、コンピューター法への反対運動が着火することを妨げた。反対運動は、当局の統制から外れたオンライン上だけに限定された。NLAの第3読会審議の直前でさえ、同法案の取り下げ乃至再検討を要求する声は十分な力が足りず、議決を阻止することはできなかった。

 法制化が決まったにもかかわらず、コンピューター法への反対運動は、沈静化することはなく、むしろ逆に反対運動は以前よりも力を増すことになっている。反対を表明しているグループは増加しており、インターネット上のグループは、政府機関のウェブサイトへの攻撃のレベルを引き上げることを表明している。「シングルゲートウェイ反対市民グループ」のフェイスブックページは、12月20日以降の攻撃レベルの引き上げが表明されており、その後、政府、首相府、官報、国家安全保障会議(NSC)の4つの政府機関のウェブサイトがダウンし、アクセスできない状態になった。「シングルゲートウェイ反対市民グループ」の動きに併せ、インターネット上の住民は、誘い合い、一斉に国防省とデジタル経済社会省のウェブサイトも攻撃した。

 コンチープ陸軍少将・国防省報道官は、国防省のウェブサイトを攻撃している個人、グループがいることを認めたが、大きな損害を被ってはいないと説明した。またルッティ陸軍中将・陸軍サイバーセンター所長は、特に外国からの異常な程の政府機関への攻撃を受けていることを明らかにし、政府機関及び担当職員に対し、インターネットのポート(出入り口)の安全管理に警戒し、もし必要がなければ一時的に閉鎖することを勧めた。

 「FIST」(Free Internet Society of Thailand)と名乗る学生グループは、バンコク芸術文化センター前でコンピューター法の反対集会を開催した。折り紙の鳩に、「コミュニケーションは管理され、自由を失うことになる」とのメッセージを書き込み、「インターネットの自由」、「プライバシー侵害」、「インターネット規制に反対」などのメッセージが書かれたプラカードを掲げた。

 NCPOは、コンピューター法の反対運動を行っているグループはNCPOの安定を脅かすほどに十分な力を有していないと評価しているかもしれない。しかし、少なくとも36万人の国民が同法に反対の署名をしており、さらに増加する傾向を示している。そして重要なことは、海外からの圧力も増していることである。ついには、国連高等人権弁務官(UNOHCHR)がコンピューター法の可決への懸念を表明した。国内からも国外からもNCPO政権への圧力は高まり続けている。これに上手く対処せず、激化していけば、ロードマップが影響を受けることになるかもしれない。