ポストトゥデイ・オンライン版は、「農産品価格低下:直面するリスク」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 農産品価格低下問題は、現在、NCPO政権への圧力を増そうとしている。これから来年初頭までは、コメ、トウモロコシ、キャッサバ、椰子油、天然ゴムといった農産品が市場に供給されてくる時期にあたる。プラユット首相は、その他の問題と合わせて混乱が拡大していく前に急いで状況を改善しなくてはらない。

 これは大きな時限爆弾である。この処理を失敗すれば、クーデターで出来た政権か民主的な選挙で選ばれた政権かを問わず、これまでの政権と同様にプラユット政権の安定性を著しく損なうことになりかねない。なぜなら農産品価格低下問題は、国家全体の経済に影響を与えることになる。政府に救済を要求し始めている全国の多くの農業者の人々は、もし政府が満足のいく問題解決策を取られなければ、デモをして政府に圧力をかけると脅しをかけている。この圧力はより強くなっている。なぜなら、NCPO政権は、絶対的な権力を自らの手に握っているからである。休職処分も失職処分も下すことが出来、あらゆる障害も乗り越え、規則や手続きさえも思いのまま進めることが出来る権力である。さらに、政府は、過去からの教訓も得ている。昨年のときのように問題が発生しても大臣に就任したばかりであると言い訳することが出来ず、事前に問題解決の方策を用意しておく必要性があることを自覚している。もし以前の政権と比較され、問題解決の取り組みの成果が以前の政権よりも劣っていた場合には、政権への圧力はさらに強いものになる。

 NCPO政権は、この問題を的確に承知しており、解決が容易ではないことを知りながらも、急いで問題解決に取り組んでいる。この季節の農産品は、同じ時期に出荷され、市場メカニズムによって価格が低下することが通常のことである。従って、市場メカニズムに介入しても明確な成果が生じるとは限らない。さらに市場メカニズムへの介入は、巨額の予算を必要とするが、その成果は短期的にしか持続しないという制約も抱えている。

 いくつかの農産品価格の傾向をみれば、それが持続的に下落していることが見える。コメ価格でさえ、(政府の対策が開始されても)未だ回復していく傾向が見えない。現在、籾米担保制度(当館注:インラック政権時の政策「ジャムナム・カーオ」(コメ担保)から名称を変え、NCPOは「ジャムナム・ユンチャーン」(貯蔵庫担保)と名付けている)での価格は、1トン当たり8730バーツであり、その他の政策と合わせると、コメ農家は1トン当たりで1万1525バーツの収入を得ることが出来る。だが、この金額では、農家を満足させることにならず、これでは一部の救済に留まり十分な救済ではないと批判を受けることになっている。

 多くの人々は、正しい問題解決の方策は、政府が農民のグループ化を支援し、籾米に代えて、様々なチャンネルを通じた直販により自分達で精米を販売させることであると意見が一致している。多くの人が同意しても、それを実行する動きは進んでいない。その他の対策として、潜在性のある農地を集約する事業については、閣議提案を準備している。同事業は、農家が農地拡大のための土地取得に当たって、最大で1000万バーツの信用供与、5年間の返済猶予、利子率0.01%を行うもので、以前の最大500万バーツ、返済猶予3年から条件が改善されている。

 トウモロコシに関しては、コメと同様に下落傾向にあり、(商務省傘下の)「公共倉庫機構」(PWO)は、農家救済のために、家畜用飼料として、チェンマイやチェンライ県などの北部4-5県から10万トン購入するように政府から委任されている。本年末に収穫されるトウモロコシは、新年に市場に出荷される60%以上に相当する。商務省は、小麦輸入業者及び小麦を使用する業者の関連する協会や民間団体に対して、閣議決定に従って、3対1の割合で、家畜用飼料としてトウモロコシの購入を呼びかけている。

 椰子と天然ゴムに関しても状況は変わりない。これらは、「政治的商品」であるが、現在の価格はそこまで下落していないが、収穫が終わり、徐々に市場に供給されるようになれば、価格は下落していくことになる。

 各地域の経済が安定せず、世界経済の行方が不透明であることも、国内商業、国際貿易にとってのリスク要因であり、これが重なって、農産品価格の下落につながっている。農家の困難が解消されなければ、最後には農家をNCPO政権へのデモに駆り立てることになり、摩擦を生み出すことになる。年末から新年の初めにかけて、政府にとって、重大な問題に直面する重要な転換点に差し掛かることになる。