トンナムのタイ政治経済研究室

タイ政治の解説、分析などを中心としたタイ研究の専門家によるブログです。

2018年06月

タクシン元首相とタイ貢献党に関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「タクシンが激しく動くとタイ貢献党が攻撃を受ける」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 20年間に亘って、タクシン・シナワット元首相は、政治的な影響力を有する主要な人物の一人であり、政治生活で培ってきたカリスマ性を有している。タイ愛国党時代からその後継であるタイ貢献党に至るまで、一度も選挙で敗北したことがないという実績によって、タイ貢献党を他の政党よりも重要な立場に置かせている。タクシン元首相の一挙手一投足に各方面からの注目が集まるのは不思議なことではない。この4年間、タクシン元首相がNCPOに反応して政治的な意見表明をしたことは、あまり多くはないことは興味深い点である。ロビイストを雇ってNCPOへ攻撃をさせているとNCPOから批判されたことに反論した事例くらいであろう。その話題が静まって以降、タクシン元首相は長い間静かに過ごしていた。

 タイが選挙モードに入ろうとしていることで、タクシン元首相に重要な動きが見られるようになってきた。それはBBCのインタビューを通じて、タイ貢献党が選挙に確実に勝利すると表明したことである。「国民を軽く見ない方が良い。今日、多くは仏教徒であるタイ国民は、我慢、忍耐をして、静かに平常に過ごしながら、時が来るのを待っているのである。いつか、その清廉な力を見せつける時がやってくる。その時に我々は何がどうなるのか知るのである。男であれば、不正はすべきではない。とりわけ、あの軍人国家の男は、不正な選挙を考えるべきでない。それは誰かに恥じることでは無く、自分自身に恥じることである」とタクシン元首相は述べた。

 今回のタクシン元首相の発言は、以下のような2つの重要な意味があった。第1にタイ貢献党の「流血」を止めることを望んだのである。官民協力(パラン・プラチャーラット)党がスリヤ・ジュンルンルアンキット(元運輸相)、ソムサック・テープスティン(元副首相)を通じて、議員引き抜き活動を活発化させており、その結果、東北部のタイ貢献党所属元議員がタイ貢献党からの離党を促されているからである。多くの所属議員は、タイ貢献党内部での次期総選挙に向けた党首選出や「大ボス」(タイ語:ナイヤイ)であるタクシン元首相がタイ貢献党を継続して支援するのかどうか、それらの内部状況が不透明なことに動揺していたのであった。だからタクシン元首相がBBCを通じて、タイ貢献党に対し未だに同元首相が支援しているとの合図を発出したのであった。

 第2に、プラユット首相兼NCPO議長の英国、フランス首脳との会談が予定されている欧州訪問に先だち、足を蹴って、折ってしまおうとの意図があったことである。プラユット首相は会談で選挙日程を明確にし、メディアからの注目を集めて、大きく報じられることを期待していたのに、同時期にタクシン元首相のBBCインタビューが報じられたことで、注目を奪われて普通の報じられ方になった。プラユット首相に多少の恥をかかせたことになる。

 今回のタクシン元首相による動き、特にタイ貢献党が選挙に勝利するとの発言は、タイ貢献党にも影響を与えることになった。先日、選挙管理委員会(EC)は、今回のタクシン元首相の発言に関して、タイ貢献党が党員ではない外部の人物によって支配されている状態にあるかどうかの調査を開始した。もし、それに該当すれば、2017年政党法の規定により、タイ貢献党に解党処分が下される可能性がある。「政党は、直接的であれ、間接的であれ、党員ではない外部の人物に管理、支配、指示を受け、政党及び党員の自由を損ねて党活動をしてはらない」と第28条に規定されており、違反となれば、政党解党処分が下される。

 まだ選挙の季節は完全には到来していないにもかかわらず、タイ貢献党は、スタート時点から既に違反行為の検挙が予約されたのである。タイ貢献党の一挙手一投足が敵陣営からの政治的な標的とされたに等しいのである。引っかけるために掘られていた何かの法律の穴に落ちることがあれば、タイ貢献党は、即時に「ツケの支払い」(タイ語:チェックビン)を迫られるのである。従って、タクシン元首相がタイ貢献党を応援し、政治の舞台で闘っていることを表明することは、タイ貢献党にとって、損と得の両方の効果がある。今後、タイ貢献党が切り抜けられるのか注目しなければならない。

NCPOによる政治家引き抜きに関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「下院議員買い取り市場が熱い:選挙屋の値段が高騰」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 現在に至るまで未だに選挙日程は明確になっていないが、プラユット首相兼NCPO議長は、19日に総選挙の実施は戴冠式後になるとの重要な発言をしている。また英国でメイ首相と会談した際には、選挙の実施に必要な法案の審理は終わっており、来年確実に総選挙が実施されると確約しており、選挙の日程はより明確になりつつある。プラユット首相は、選挙の実施を延期させる目的で具体的な日程を明らかにしないのではなく、正式に選挙実施日が発表できるように準備が整うことを待つ状態になったのである。その準備として、来週(25日)に予定されているNCPOと政党との協議があり、政党法で定められている問題含みの予備投票の実施の有無を含む総選挙に向けての方策が話し合われる予定である。

 上記のような動きが総選挙日程の決定に向けて進展しつつあるが、もう一つ別の現象も見られるようになってきた。それは、「元下院議員の買い取り市場」(タイ語:タラート・ショッピン・ソーソー)がこれまで経験したことがないような活況を呈していることである。特にスリヤ・ジュンルンルアンキット(元運輸相)とソムサック・テープスティン(元副首相)が官民協力(パラン・プラチャーラット)党の幹部として政界に復帰し、同党と適度に距離を保つソムキット副首相と一緒に活動しているからである。同党の目的は、タイ貢献党の地盤である東北部及び北部の元議員を出来る限り多く吸引することで、タイ貢献党の手足を削ぎ落とすることである。

 当初、誰もが、タイ貢献党元議員はタクシン元首相のカリスマ性の恩恵を受けることが出来るタイ貢献党を捨てて出て行くことはないと思っていた。しかし、NCPOが支配するこの4年間で様々な条件が変化していた。「スリヤは金があり、ソムサックはカリスマ性があり、ソムキットは権力がある」ので、彼らがタイ貢献党の元議員を訪問した際に手厚い出迎えを受けたことは不思議なことではない。何故ならば「選挙屋」(タイ語:ナック・ルアックタン)は、「先を知る鳥」(タイ語:ノック・ルー)のように、どちらに味方すれば勝利者になれるのか、その方向を知るという特別な能力を有しているからである。

 タイ貢献党を取り巻く状況は不安定であり、未だに党首を決定することが出来ず、しかも同党の幹部の多くは訴訟を抱えている。そのため同党所属の元議員は、タイ貢献党の「軒下」がどれくらい安定しているのか不安に思っているのである。そこでタイ貢献党と一緒に溺れ死ぬよりは、「剣先を出して死ぬ」(タイ語:パイ・ターイ・アオ・ダープ・ナー)の方を選ぶ者もいるのである。

 「元下院議員の買い取り市場」が信じられないほど活況となっている要因を探してみれば、「小選挙区比例代表連動制」という選挙制度が関わっていることが分かる。同選挙制度では、小選挙区候補者への1票の投票のみにより、500人の下院定数中の350人の小選挙区制と150人の比例代表制の双方を選出するのである。重要なことは、比例代表制の選出の際には、小選挙区で敗北した候補者が獲得した得票数も議席割り当ての計算に繰り入れられる点である。理論上このような制度は、「選挙屋」に利益をもたらすことになる。小選挙区選出の元下院議員で自らの古い地盤を有している政治家の多くは、それを利用して、自らの利益を最大化させるために(所属政党を巡って)交渉を有利に働かせることができるためである。

 他方、ある程度の得票数を有しながら小選挙区で勝利することが出来ないような政治家でも、その得票数を比例代表制度での議席獲得に貢献させることが出来るので、その報酬として、大臣政務官や秘書官などの役職が与えられるかもしれない。「A級」ではない、2軍レベルの政治家や3軍レベルの選挙屋であっても、一定の得票が見込めるのであれば、官民協力党のような空いてる田圃をたくさん有する新党にとっては、非常に好ましい人物なのである。

 「元下院議員の買い取り市場」の活況は、官民協力党のみに利益をもらたすものではなく、ステープ・トゥアクスバン元PDRC事務局長が率いるタイ国民結集(ルアム・パラン・プラチャーチャトタイ)党にも同様の利益を与えるのである。これまでに南部で民主党の候補として下院議員選挙に立候補できなかった政治家達に、より良い立場に昇格できる機会を与えることになる。これまで南部では、特定の派閥(民主党)が候補者を数十年間も独占してきたが、その派閥の常連候補者連中から不利に扱われることなく立候補が出来るようになるのである。

 以上のように元下院議員達にとっては、所属政党の移籍に向けて空が晴れたような状況になったが、他方で(大政党には不利な制度である)新しい選挙制度の奇跡によって、二大政党は、未だ選挙活動に入る前から頭が痛い状態となっているのである。

NCPO政党の距離に関する評論記事

マティチョンは、「NCPOの(政治家の)引き抜きにより損なわれる価値を測る」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 プリチャー・レンソムブンスック(ルーイ県元タイ貢献党議員・元天然資源環境大臣)とその仲間達(が官民協力党への引き抜き工作を担当しているスリヤ元運輸相、ソムサック元副首相のルーイ県訪問を出迎えた)の事例が示すように「吸引力」の使用は成功したようであり、タイ貢献党を激震させる結果となった。しかし、実際のところ、この(引き抜き工作の)「成功」は、「副作用」を伴うものである。

 最も重要な点は、NCPOのネットワーク内にある各政党に自分達の姿の真剣な見直しを迫ることになる点である。吸引の目的が大いに感情を損ねるものだからである。考えてみれば分かることであるが、「笛吹きデモ」に参加し、「シャットダウン」(バンコク封鎖)を実行し、自身を「大国民塊」(タイ語:ムワンマハープラチャーチョン)と呼んでいた連中は、どのように感じるだろうか。あの頃の要求事項は、「選挙の前に改革を」であった。2014年5月22日のクーデター以降、2018年5月に至るまでに様々なことが実行されてきたが、この連中は、(NCPO側に寝返った元タイ愛国党幹部であり、汚い政治家として批判されてきた)ソムサック・テープスティン元副首相やスリヤ・ジュンルンルアンキット元運輸相を貢献者として称賛するように心変わりするというのだろうか。

 以前に「大国民塊」に参加していたスター俳優や歌手、ジャーナリストの多くは、ステープ・トゥアクスバンPDRC事務局長やパイブン・ニティタワン元上院議員が何を考えているのか知りたいであろう。これが2点目の副作用を生み出すのである。それは、官民協力(パラン・プラチャーラット)党とNCPOのネットワーク内の各政党、つまり「タイ国民結集(ルワム・パラン・プラチャーチャートタイ)党」、「国民改革(プラチャーチョン・パティループ)党」、「タイ国家の力(パラン・チャートタイ)党」、「新選択(ターンルアック・マイ)党」等の間の距離を遠ざけることになることである。官民協力党の役割は、広範で基盤となるものであり、標的である政党所属の元下院議員達を全力で勧誘する運動が出来るのである。このような行為に(NCPOから)全行程で「青信号」が出ていると見られる。ルーイ空港に到着してから(同県内の)リゾート施設に向かって、テーブルを挟んで対面に着席するまでの道中はスムーズであり、SNSで公開されているビデオクリップをみれば、それは明白であった(注:NCPOが「青信号」を出して交通の便宜を図っていたとみられる)。

 このような状況をステープ氏は受け流しているが、知性に富み、哲学に基づいた輝かしい知識人であるアネーク・ラオタマタット博士(タイ国民結集党の党首候補)は、自然にNCPOとの距離を感じただろう。要するに親NCPO政党の立場は一緒であっても、官民協力党は他の政党よりも「部内者」であるという特徴を有して運営されており、その他の政党は「部外者」として置かれているのである。しかし、他の政党も民主党とタイ名誉党、パランチョン党と比較すれば、NCPOの内部を構成する政党として扱われている。しかし、それは官民協力党とは比較のしようがないのである。

 テレビ放送の終わったドラマのように嫉妬の感情を招くと、長期的には損失の方が利益よりも大きくなるが、上記の関係は、それを反映させた結果なのである。損失は、他の誰かでなく、NCPOにとっての損失である。NCPOは、ネットワーク内の各政党の順序をつけるが、悲しくさせて、政治的な思想に影響を与えない程度で余りにも差が出すぎないように距離を保たなければならないのである。NCPOにとって魅惑(タイ語:サネー)の運営管理はより重要になっているのである。

地方選挙に関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「県行政機構(オーボーチョー)長選挙はNCPOの勢力確認のゲーム」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 国政選挙に先立って地方選挙が実施されるとの明確なサインが見られる。その時期が年内であるのかどうかは、様々な方面の準備状況とNCPOがいつ実施することを望むか次第である。ひとまず、ウィサヌ副首相は、年内に実施されるかどうか分からないと半々の可能性を示唆している。同副首相は、地方選挙関連6法案の進捗状況は、90%まで来ており、検討作業を行っているが、定数や就任要件、欠格要件、選出方法に関して、下院選挙制度と一致させるために多くの箇所の修正を要すると説明している。地方選挙関連6法案は、法制委員会での検討を終えた後、6月中に閣議に諮り、承認を得てから国家立法議会(NLA)に送付されて、7月~9月の期間に審議されて承認されれば、国王上奏の手続きに送られることになる。

 「地方選挙に関して、バンコク都知事選挙を先に実施するかどうかは分からない」とウィサヌ副首相は述べている。これは、「政治活動解禁」の条件と一致した動きである。先週、政府と選挙管理委員会(EC)、憲法起草委員会(CDC)は、合同会議を開催し、その結論として、首相に4項目の提案を行ったが、それは、政治活動の解禁は段階を踏んで行うべきというものであった。地方選挙の立候補は、政党に所属する必要はなく、個人の資格で行われるものであり、政党の会議を開催する必要もないため、政党活動の解禁が行われなくても、直接的には地方選挙に影響を与えない。

 6月末に総選挙実施に向けた政権と各政党による協議が開催される予定であり、プラユット首相は、プラウィット副首相兼国防相にその会議の議長を委任しているが、一部の政党から協議に参加しないことが表明されている。その協議は、法的にいつ実施なければならないと定められたものでなく、後日に総選挙実施を延期したくなった際の口実に使うことも出来るので、協議が延期になる可能性もある。これが地方選挙との相違点である。地方選挙は、法律が整い、NCPOから青信号が出されれば、いつでも実施が可能である。特に現在の状況は、地方自治体首長が全県で徐々に任期満了を迎えており、NCPO命令によって暫定首長としての職務を果たすだけとなっている。

 国政選挙の前に地方選挙を実施することは、NCPOへの圧力を減らすことにもつながる。今後、国政選挙実施の時期が様々な制約により予定よりも1、2ヶ月程度延期となっても、少なくともNCPO政権は、選挙を実施する意志があることを示すことが出来る。たとえ実施される選挙が地方選挙であろうと何も動きがないよりは良いことである。NCPOの視点からの地方選挙の重要性は、「人気チェック」(タイ語:ワット・クラセー)をし、併せて、各地でどの程度NCPOが強いのか、またNCPOの期待に応えてくれるのかを図るためである。

 2018年第6号首相命令による4人の県行政機構(オーボーチョー)長の停職解除による職務復帰もこれらの動きに一致したものである。この復職は、各地で活動を開始した親NCPO政党のための政治基盤になるように促す動きであると見られている。停職処分から復職した4人の県行政機構長は、サティラポン・ナークスック・ヤソ-トン県行政機構長(東北部)、マライラック・トーンパー・ムクダハン県行政機構長(東北部)、ブンルート・ブラヌパコン・チェンマイ県行政機構長(北部)、チャイモンコン・チャイヤロップ・サコンナコン県行政機構長(東北部)であり、これら4人とも政治的に重要な地域に居る人物達である。この復職の動きには、バーンリムナム派政治グループ幹部であり、官民協力(パラン・プラチャーラット)党に元議員を吸引し、同党の結集に大きな役割を果たしている核となっているスチャート・タンチャルーン氏による調整があった噂されている。同氏こそが(官民協力党)チームを強化するために各地で県行政機構長を勧誘するゲームを進めている人物である。

 地方選挙は、各地における準備状況の確認のための類例として、国政選挙の前に実施される。混乱が生じるリスクがあるのか、暴力的な事態が将来発生するかどうかの確認のためだけでなく、地方選挙の結果は各地において(NCPOが)どの程度の人気度と強靱さを有しているかを示す指標である。どこの地域が弱点なのか把握し、各地の候補者を変更する必要性を認識させることになるので、それが国政選挙の準備に向けたNCPOの戦略に反映されることになるだろう。大政党の地盤、特に長年に亘って強靱な地盤を維持している一部の地域では、(官民協力党への)吸引が成功しないのであれば、(引き抜く代わりに)依拠している政治地盤を(弱める方向に)変化させることになるだろう。その間に、NCPO政権は、様々なプログラムを通じて各地に予算を注入し、併せて各県へ視察訪問し、移動閣議を開催することで各地での支持を集めようしている。

タイ貢献党への処分に関する評論記事

マティチョンは、「タイ貢献党とNCPO党の直面の衝撃」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 タイ貢献党を「処分」できない限り、NCPOによる権力継承は成功しないか、スムーズには進まない(注:処分の具体的内容は記されていないものの、解党処分も含む意味と考えられる)。「処分」という言葉は、NCPOによる2014年クーデター時点からの設計図ないし主要戦略に盛り込まれていたものである。それは、タイ貢献党への数々の追及からも窺うことができる。インラック・シナワットへの弾劾と資産没収に続き、スラポン・スープヴォーンリー医師(元財務大臣が有罪で実刑判決で収監されたこと)やスカンポン・スワンナタット空軍大将(元国防大臣が不正行為で弾劾を受けたこと)など次から次へとタイ貢献党の追い詰めていった。それから憲法や国家戦略を基にしてルールを策定し、それを支持を獲得するための道具として利用してきた。全ては、タイ貢献党を「処分」するためにである。

 2019年2月の総選挙へロードマップが進むにつれ、タイ貢献党を処分しようという試みはより激しさを増していく。或る元タイ愛国党下院議員(注:ソムサック・テープスティン元副首相を示唆していると思われる)による提案は、どうやって「分裂」(テーク)させるかということである。タイ貢献党から「吸引」出来ないのであれば、勝利はより困難である。現在までに吸引が出来たのは、民主党の一部であり、タイ国民発展党の一部であり、タイ名誉党の一部であり、タイ貢献党の人物には及んでない。(注:ソムサック・テープスティン元副首相の地盤を意味する)スコータイ県から報じられた60人の(移籍予定とされる)名簿をみても、それは2011年7月の総選挙でタイ貢献党の議席を保有していた人物ではなく、(タイ貢献党の前身である)タイ愛国党、国民の力党の解党時点での元下院議員であった。

 官民協力(パラン・プラチャーラット)党やタイ国民結集(ルワム・パラン・プラチャーチャートタイ)党の結成の最終目標は何であろうか。それは、絶対にタイ貢献党に勝利させないようにすることである。2017年憲法に盛り込まれたルールを見れば、それは実態は「選挙」を意識した結果であることが分かる。どうすればタイ貢献党を100議席以下に引きずり下ろすことが出来るだろうかということを意図していたのである。しかしながら、現在の政界で広まって信じられている「噂」に拠れば、タイ貢献党は少なくとも下院200議席を確保することができるという。タイ貢献党の主要な勢力は、選挙区制の議員である。NCPO側の政党である官民協力党やタイ国民結集党の責務は、タイ貢献党の議席を減らすことなのである。

 今後、NCPOは、タイ貢献党に伴う政治的に不確実な基盤の上に乗りながら、ロードマップを進めることになる。実際のところ、タイ貢献党は、温和しくNCPOに狩られることを待つような獲物ではく、むしろ、その反対で、時々に激しく反撃する性質である。タイ貢献党の激しい反撃こそが恐ろしいことである。

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