トンナムのタイ政治経済研究室

タイ政治の解説、分析などを中心としたタイ研究の専門家によるブログです。

2017年03月

エネルギー政策に関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「エネルギー政策、政府の弱点」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 エネルギー政策は、未だ問題が解決できず、NCPO政権の「弱点」になろうとしている。関係者の全てが納得するような、対立を解消する妥協点を探すことは困難である。その結果、推進しようとしている各事業は、推進することができず、それどころか撤回すれば、損害を発生させるか、機会を喪失する可能性もある。長期的課題についても全て中途半端な状態のままとなっている。重要なことは、これらがデリケートな問題であり、最終的に対立を招く可能性があることである。

 最初の問題は、クラビ県での石炭発電所建設計画事業である。地元の人々、NGO、学者、そして政治家などの各方面からの全力で反対する強硬な声に直面し、最終的に政府は、仕方なく、新しい基準を適用することを認めるまで事業を後退させることになった。その結果、環境影響評価(EIA)段階にまで手続きを戻し、環境健康影響評価(EHIA)を新たに実施することになった。発電所建設計画の推進は、当然ながら、未だ継続している。エネルギー安全保障の理由から、増加し続ける電力需要を賄うために新たなエネルギーを探し続ける必要があるからである。

 NCPOがチャルームチャイ陸軍司令官・NCPO事務局長を委員長とし、ほとんどの委員を軍人で構成する「南部電力状況に関する知識形成・理解促進・意見聴取委員会」を設置する命令を発出したことで、この問題の新たな対立のサインが見え始めている。同委員会は、南部の電力状況への理解を促進し、関係者からの意見を聴取するための公聴会をスラタニ県、クラビ県、ソンクラ-県の3カ所で開始した。軍人がホストする公聴会のスタイルでは、各方面から意見を聴取するのではなく、最初から既に決めてあることを結論づけるだけになると懸念する声が上がっている。

 こうした懸念は、クライサック・チュンハワン元議員の意見と一致する。クライサック元議員は、政府が南部でのエネルギー問題に関し、地元の人々の生活と観光業に影響を与えず、エネルギー施設とコミュニティーを共存させるために、地元の人々の意見を聞かなければならないと主張し、以下のように述べた。「NCPOは、軍人では無く、中立的で、広く認められているエネルギー分野の学識者を委員に任命すべきである。軍人には、国民の参加プロセスが理解できるかどうか分からないからである。今後も幅広い意見を聴取することもせず、事業を推進しようとするならば、それが第2回目の危機に直面させる原因になると信じている。」

 この問題の出口は、石炭発電所を「建設する」か「建設しない」という二択だけではない。投資費用だけに拘って石炭発電所に固執するのではなく、天然ガス発電所を建設することや各種の再生可能エネルギーによる発電所を建設するという次元での解決策もあるはずである。仮に政府がこの方針に固執するならば、その先の過程で対立と暴力に直面することから逃れることはできないだろう。

 同様の問題として、これまでのホットイシューである石油関連法2法案(石油法改正法と石油売上税改正法)についても3月30日に国家立法議会(NLA)で第2読会、第3読会の審議が予定されている。「エネルギー改革国民ネットワーク」が、NLAでの法案審議が開始された当初から反対を表明してきたが、その動きを止めさせることはほぼ出来なかった。最終的にNLAは、同法案を第1読会で可決し、その後、委員会レベルで何度も期限を延長しながら法案の詳細について検討してきた。しかし、NLAは、評価を誤っていた。反対派の力は衰えていなかった。特に「国家エネルギー社」の設置の問題については、これまで合意の出来る結論がまとまっておらず強い批判に直面している。この問題の対処の方向性を誤れば大きな問題となり、委員会のこれまでの努力が無駄になってしまう可能性もある。

 上記の問題も発電所建設計画の事例と大差ないのである。これら石油関連法案の推進も同様にエネルギー安全保障に起因するからである。特に石油採掘事業権の入札は、将来のエネルギー安全保障に関わっている。この問題は、微妙で繊細な問題であり、NCPO政権の安定性を左右するようになっている。

 MRW.プリディヤトーン元経済担当副首相がNLA宛の公開書簡を発表する記者会見を開催し、副首相在職中に石油関連法案の修正を要請されたことを明らかにした。「国家石油社」の設置に関しては、首相であろうと、誰であろうと、これまで全く言及されることがなかった。その設置のメリットとデメリット及びその設置の必要性についての調査検討も政府は未だ何も着手していない。「この件に関して、特定の個人ないし特定のグループに対して何か遠慮でもしているのでなければ、内閣が委員会による疑わしき要求に対して便宜を計る必要などは全くない。権限は内閣にもある。仮に法案の通りになってしまえば、国家の石油事業は後退することになってしまう」と主張している。以上のようにエネルギー問題は、政府の弱点となっているのである。もし上手に対処が出来なければ、政府の信頼性と安定性を著しく損なうことになりかねないのである。

和平交渉参加の武装勢力幹部の死去に関する評論記事

イサラニュースは、タイ政府との和平交渉に参加したタイ深南部武装勢力の幹部の死去に関する評論記事を掲載しているところ概要以下のとおり。

 3月中旬、数多くの情報筋から、タイ深南部の分離独立を目指す武装勢力の重要人物の一人が謎の死を遂げたとの情報がもたらされた。マレーシア政府は、その人物が自動車事故で死去したと説明し、他方でマレーシアの治安機関高官は、マレーシアのトレンガヌ州で手製爆弾の作成指導中に事故に遭って死去したと述べている。この人物は、側近の一部からは「アーハマッド」または「アーブ」と呼ばれる人物で、タイ政府との交渉で重要な役割を果たしてきた人物であった。

 2013年のインラック政権時、パラドン・パッタナーターブット国家安全保障会議(NSC)事務局長を代表とするタイ政府代表団とハッサン・トーイップBRN幹部を団長とするBRNとの間の和平交渉にも、アーハマッドは、BRN交渉団の事務局長として参加していた。またプラユット政権と6つの武装勢力のアンブレラ組織である「マーラーパッタニー」との間での和平交渉でも、アーハマッドは、交渉団全体で議論する前段階で、様々な課題についての詳細を検討するための技術作業チーム乃至小委員会での役割を担っていた。

 興味深いことに、マレーシア側は、この人物の死去の報を隠蔽しようとしていたことである。その理由は、タイ政府との和平交渉に影響を与えることを恐れたからであるが、タイ治安機関は、アーハマッドが手製爆弾の作成指導中に事故に遭って死去したことが真実であれば、それはマレーシア政府がマレーシア国内に居留するタイ深南部分離独立を掲げる武装勢力の動きを十分に管理出来ていないか、さもなけば、マレーシア国内の治安情勢と国際テロリズムに関与していない限りにおいて、彼らが活動出来るように片目を瞑りながら見過ごしていることを示していると見ている。もし、そうであれば、和平交渉の仲介役としてのマレーシア政府の不十分な真剣度を反映したものであろう。

 過去数ヶ月、深南部でのテロ事件は統計上、大きくその数を減らしてきた。マーラーパッタニーとアクサラー・グーットポン陸軍大将を団長とするタイ政府和平交渉団は、「安全地帯」設定のため、現在、初めて合同でルール作りと状況評価を実施しているところである。マレーシア政府は、ドゥンロ・ウェーマノーとその周辺の武装勢力の幹部達を呼び出し、安全地帯内でのテロ事件を禁じたとの報道がある。ドゥンロは、長年マレーシアに居住していたスペイン・バソーの死去後にBRNの指導者として権力を掌握したばかりである。仮にマレーシアの役割が報道のとおりであれば、深南部の治安維持も治安悪化もマレーシアの影響力と意図次第で左右されることを意味する。従って、和平交渉は、持続的で本質的な平和構築を保証しないのかもしれない。

 アピシット民主党政権時(2008年~2011年)の和平交渉団の一員であったクライサック・チュンハワン元議員は、以前に「イサラニュース社」のインタビューに答え、マレーシアはタイ深南部問題に関して利益相反関係にあるので、マレーシアを和平交渉の仲介役とするべきではないと述べている。アピシット政権は、インドネシアを仲介役とし、和平交渉で3つの郡を安全地帯に設定することに成功している。クライサック曰く、「これまでマレーシア政府に対して、マレーシアに逃亡中のタイ当局から逮捕状の発付されている人物の身柄引き渡しを要請してきた。さもなくば、少なくとも分離独立武装勢力の重要メンバーの管理をしておくように要請してきた。しかし、具体的な成果は得られたことがなかった。」

 「帰還事業」、すなわちタイ当局より逮捕状が発付されている者も含む武装勢力メンバーが心を入れ替えて、帰国を望んで自ら出頭し、タイ当局が彼らの帰還を受け入れる住宅地をパッタニー県パナーレ郡に準備している事業であるが、この事業に関しても、元第4方面軍副司令官のアクニット・ムーンサワット陸軍大将が以下のように注意を呼びかけている。

 「分離独立武装勢力のほぼ全てのレベルの指導層がマレーシアに数多く居住している。帰還事業を進める真の目的は、マレーシアがタイ治安当局側の有する名簿と逮捕状を照合して、これらの人物を送還してくれないからである。もしマレーシア側が彼らをマレーシア国内に居住させておきたいのであれば、彼らの運動がタイの治安情勢に影響を与えないように管理下に置くため、彼らが集合して居住するための住宅地を整備し、彼らの親族がタイ側から訪問してきた際には、その度に面会を認めるように配慮すべきである。」「このような問題解決方法は、タイ政府は過去数十年前にマレー共産党ゲリラ勢力問題の対処のために使用したことがある。その際には、交渉が成立した後、マレーシアに帰還することを望む者には、身柄を送還をしてやり、帰還を望まない者に対しては、タイ政府が住宅地を整備し、生計のために土地を譲渡した。マレーシア側の親族が面会のためにタイ領内の住宅地を訪問しようとした場合には、タイ当局と連絡調整するというものであった。このような方法であれば、マレーシアの治安に影響を与えるようなことなく、(マレー共産党)中国人ゲリラの運動を管理することが出来た。」「しかし他方でマレーシア政府は、何も実施しようとせず、マレーシア居住の武装勢力に自由に活動をさせたままである。しかも先日には、ケランタン州内の或る「ポノ」(イスラム学校)でBRNの新しい指導者を選出するための会議を開催することまで許してしまっている。」

BRNの新戦略に関する評論記事

イサラニュースは、BRNの新戦略に関する評論記事を掲載しているところ概要以下のとおり。

 治安当局の情報で興味深いことは、BRNが戦略を変更したことである。それは、タイ政府との交渉に非公式ながらもDPP(Dewan Pimpinan Parti;Party Leadership Council)と関係のある代表を派遣しただけでなく、仏暦2575年(西暦2032年)までに領土を取り戻し、「パッタニー」を解放するというものである。この戦略は、故マセー・ウセーン元指導者兼銃強奪事件の重要容疑者が提唱した「7段階計画」から変更されたものである。「7段階計画」とは、青少年育成を重視し、治安悪化により諸外国が介入する条件を作り出し、パッタニーの解放を目指すというものである。ただし、この計画の目標期限はとうの昔に過ぎ去ってしまっている。

 新戦略乃至旧戦略の一部かもしれないものは、これまで公表されてこなかった。これは、2013年のインラック政権下でのタイ政府との交渉に加わることになったハッサン・トーイップ指導者の時期から開始されたと思われる。マレーシアが和平対話の仲介者としてBRNに参加を強制したのであるが、そのことにより指導者の多くが「秘匿性」を失って、広く知られることになった。そのことがBRNの立場を深南部でのタイ政府への「対抗者」の実体組織であり、タイ社会と国際社会に要求を掲げて対話する地位へと格上げさせる転換点となった。それまでBRNは、闘争の一形態として「秘密組織」の立場に留まっていた。彼らは、過激なテロ組織のように自身を公表するようなことも、ゲリラ戦争のように地域内の政治運動に干渉するようなこともせず、将来の公表に備えて組織化のための運営を続けていた。 

 BRNの組織構造は、精神的指導者、DPP議長(現在は、ドゥンロ・ウェマノー)、4部門の顧問団(軍事部門、政治部門、経済部門、ウラマー(宗教指導者)部門)、DPP事務局長(現在は、アドゥン・ムニー)で構成されている。DPPは事務局長以外に6つの分野を指揮する6人の指導者で構成される。それは、軍事、青少年、政治、教育、会計、調整の6つの分野である。DPPについて、一部の専門家は、「政治局委員会」を最高組織としている共産党方式の組織形態をしていると分析している。その他、「中央運営委員会」も有し、略語として「DKP」と称され、8分野を運営している。それは、軍事、青少年、会計、広報、教育、女性、行政、調整である。これら全ての分野は、地域での活動実践と結びついている。

 BRNの闘争方針は、第1に戦術としての成果に期待せず、戦略に資するような暴力行為を起こすこと。第2に対立、隠蔽、混乱の状態を発生させ、自分達を信じるように宣伝すること。第3に政治的な世論喚起をし、1960年「国連決議1514号(XV)」、つまり「植民地独立付与宣言」の民族自決権に基づいて領土奪還の機会を生み出す。(パッタニーを植民地の状態であるように思わせることで、自決権を主張して、分離独立の投票をするため。それがBRNがタイ政府を「サイアムの植民地主義者」と呼ぶ理由である。)第4に党員から党費を徴収し、「ザカート」による喜捨を受け入れる。第5に青少年をイスラム教育機関を通じて組織化する。第6に調整と運動である。

 上記の6つの闘争方針は、未だ続けられているが、現在は「タイ政府と交渉する」という方針も加えられている。BRNは、しぶしぶながら2013年から和平対話に加わり、その後には非公式ながら現在も継続中のプラユット政権との和平交渉にも参加している。マスクリー・ハーリーを交渉団長とし、アーワン・ヤーバをマーラーパッタニーの議長とする交渉団の中に少なくとも5人のBRN指導層が加わっている。

 一方でBRNも自らのネットワークを拡大させ、海外での活動を強化しようとしている。昨年には世界20カ国の連絡調整所で会議を開催していた。それらは、イスラム教徒が多数派を占めるASEAN加盟国、中東諸国、アフリカ諸国の他、欧州や北米などのイスラム教徒が多くはない国も含まれる。サウジアラビアで連絡調整会議が開催された際には、タイ政府とマーラーパッタニーとの交渉が成功しようと失敗しようと、タイ政府が和平対話を進めなければならなくなるとし、和平交渉に臨む準備をすることが決められた。

 上記の全てがタイ治安機関が過去13年間の深南部地域の治安情勢で最も重要な役割を果たすと見ているBRNの方針である。現在、タイ政府は、武装勢力、特にマーラーパッタニーとの和平対話を推進していかなければならないと評価している。たとえ治安状況が政府が期待している程に十分に沈静化しないとしても、BRNの多くの指導者が判明するという結果を導いているからである。そして彼らも、タイ政府とマーラーパッタニーとの和平交渉に参加して、暴力行使の停止合意に約束させられた幹部達、実働部隊のRKKと同じように、対話推進を認めざるを得なくなっている。

赤シャツに関する評論記事

ポストトゥデイ・オンライン版は、「赤シャツ弱体化、NCPOのリスク要因が低下」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 ゴーティーこと、パトゥムタニ県赤シャツ幹部のウッティポン・ゴチャタムクン氏のネットワークに関係する7県9カ所の一斉捜査によって、M16が4丁、M79投擲機1丁、騎兵銃1丁、ショットガン1丁、その他の銃器を合わせて13丁と5000発以上の弾薬などが押収された。この捜索は、チャクティップ警察大将・警察長官、シーワラー警察大将・警察副長官、パイシット警察大佐・法務省特別捜査局(DSI)局長、ソムバット警察少将・首都警察局次長、ウィチャーン警察少将・NCPO法務執行部長までが揃って国家警察本部で記者会見を開くほどの大掛かりなものであった。

 この間、捜査当局が違反者、関係者の捜索を続けているが、プラウィット副首相兼国防相は、武器の不法所持容疑の刑事犯として、ラオス政府にゴーティーの身柄引き渡しを要請することを明言し、「ゴーティーはタイ人であり、自身が国家に同情しなければならない。現在、タイ国民は安寧を望んでいるのだ。ゴーティーが過去にどのような行為をしてきた人物なのか見て欲しい。今回の事件に関して、私は特に何かを期待しているわけでは全くないことを強調しておく。これまで何度も戦争を経験し、国家に仕えて来て、私はもう高齢となった」と述べている。これは、赤シャツのネットワークに対して、本気で制圧するという合図を送っていると見ることが出来る。この問題に関しては、プラユット首相及びプラウィット副首相兼国防相の暗殺計画にも結びついていることでもある。

 治安当局の記者会見で、ゴーティーのネットワークがタンマガーイ寺院の信徒グループと刑法第112条不敬罪に該当する活動に関与していると主張していることから見えるように、赤シャツグループの運動が未だ継続中であり、拡大しているように見える。この2つがNCPO政権が重要視している問題である。

 「これらの個人は、2010年の赤シャツの集会に参加していた経歴があり、これまでゴーティーは、SNSを通じて政府及びNCPOへ攻撃をしてきた。タンマガーイ寺院の中に捜査に入ろうとする警察に対抗するように信者を煽動し、衝突させようともしてきた。当局によって逮捕された9人の容疑者の内の1人は、当局捜査員による尾行により、逮捕されるまでの間にタンマガーイ寺院に出没していたことが明らかになっている。」「2017年2月中に国家指導者と国家の重要人物の攻撃を準備していたことが判明している。『子犬同志』と名乗るコードネームの人物が、ユーチューブ上の番組『ファイイェン・チャンネル』の『タイ連邦国家のためのオンライン・ラジオ』を通じて、政府を攻撃しながら、プラユット首相及びプラウィット副首相兼国防相、その他国家の重要人物達の暗殺を準備していること明らかにしていた。」とソムバット警察少将は述べている。

 ウェーン医師・UDD幹部は、急いで反論し、ゴーティーのネットワークと赤シャツの関係を否定した。これは、彼ら自身がクーデターの発生以降、赤シャツの活動に継続的に制限をかけ続けているサインであり、UDD幹部達にNCPOに睨まれて危険に晒すような言動を何もせず、大人しく静かにしているように促しているのである。赤シャツの幹部達は、数年来の刑事訴訟を抱えており、現在、その判決が下される運命が近づいている。

 先日、控訴審は、赤シャツのハードコアグループの一人であるアリスマン幹部に対し、2009年にUDD支持者を率いてパタヤのロイヤルクリフリゾート・ホテルを襲撃し、ASEAN首脳会議を中止に追い込んだ事件に関して、禁固4年の判決を下した。他の幹部も同じように数々の訴訟を抱えており、これが治安へのリスクとなるようなことや政府を煩わせるような活動を何もしないように制限をしている理由である。そのようなことをすれば、訴訟判決や保釈請求などにも影響を受けることになりかねない。これらの要因にによって、赤シャツの力は、これまでのように強固ではなくなっている。その結果、政府にとって、混乱が生じるようなリスク要因を減少させることができるのである。

タイ名誉党に関する評論記事

タイラットは、「タイ名誉党は何をされたのか?」と題した評論記事を掲載しているところ、概要以下のとおり。

 イライラし始めているのだ。ウィロート・パオイン警察中将・タイ貢献党党首代行が「団結国民和解のための意見聴取小委員会」委員長を務めるチャイチャーン・チャーンモンコン陸軍大将・国防事務次官宛に書簡を提出した。その書簡では、プラユット首相兼NCPO議長の下にある軍人達が委員を務めるような委員会は、中立性が欠けているので同委員会を取り潰すことを要求している。そもそも和解のための誓約を実行しないことから察することができるように、特にしっかりとした分析をするまでもなく、タイ貢献党の本音を簡単に読み取ることが出来る。タイ貢献党の動きは、「大ボス」であるタクシン元首相が「法の奇跡」によって、息子、娘が実行した「シンコープ社」株式売却益への課税という「ツケ」を請求されるという不幸な出来事が発生したことと一致している。彼は帰国を我慢する状況が続いており、タイに戻るためのゲートもほぼ閉まりかかっているのである。それ故、タイ貢献党が遠い異国からの合図によって、一方だけが叩かれる国民和解に背を向けたとしても不思議なことではない。

 最近、ソムヨット・ブンパンムワン警察大将・タイフットボール協会会長・元警察長官が慌ててジャクティップ警察長官を訪問する出来事が起こった。それは、或る有名なフェイスブックページに対し、刑事事件として申し立てをするためであった。同ページは、「国王の名前を騙り、元政治家と共同経営し、ブリーラム県に隣接するカンボジア国内においてカジノを開業した」とのメッセージを投稿していた。この投稿に関し、ソムヨット元警察長官は、自分はカジノ開業の自由化を支援すべきとの立場を取っているが、そのようなことには関与していないとして、投稿の内容を否定した。重要な点は、ソムヨット元警察長官は、自身が警察官の勤務を開始してから警察長官の勤務を終えるまでの期間に一生涯で、自身も家族も一度たりとも王室の名を騙るような行為はしていないと言明したことである。

 それに続いて、アヌティン・チャンウィラクン・タイ名誉党党首も警察長官を訪問するという行動に出た。「カンボジアでカジノを共同経営している」とのフェイスブックの投稿は、真実では無く、名誉毀損に当たるとして、刑事事件の申し立てをするためであった。アヌティン氏も同様に慌てて無秩序でホットな噂を否定したのであった。この前には、タイ名誉党の外側から同党内に影響力を有する大物政治家のネーウィン・チットチョープ氏がブリーラム県警察を訪問している。同氏は、カンボジア領内のカジノの写真と共に自身がカジノの経営者であると投稿した人物に対して刑事手続きを行った。コンピューター・システムを通じて写真とメッセージを投稿し、真実であるかのように誤解させ、一般国民に対する自身の名誉を毀損する意図があり、それにより損害を受けたとの申し立て内容であった。「SNS上で投稿され共有されている話は、真実ではなく、自分はカンボジア国内で一切のビジネスをやったことがないし、国内外でいかなるカジノの経営も共同経営もしたことはない」とネーウィン氏は否定している。

 過去のボスがネーウィン氏にゲームを仕掛けたが、まだ着火していないのであろう。興味深いことに、この件は、タイ名誉党を取り仕切っているネーウィン、アヌティン、ソムヨットを相手に発生したことである。彼らは、隠れながら、プラウィット副首相兼国防大臣をボスとする派閥に直結し、一定の中立的な距離をとる派閥と見られている。ネーウィン氏と過去のボスとの間で何らかの裏取引に関する噂が流れた後、タイ名誉党は、調整や結束の役割を果たすため、活発な動きをしている。

 タイ名誉党が「団結和解準備委員会」において恩赦の提案をしたタイミングと同時に、アヌティン氏がソンティ・ブンヤラットガリン陸軍大将・元クーデター首謀者を引き連れて、海外に居るタクシン元首相と和解のために引き合わせたという数年前の旧い報道が再び注目された。アヌティン氏は、このことへの対処に追われている。タイ名誉党は、タクシンの方へ将棋の駒を進めたところであったが、その結果、危険な裂け目に直面した。必死に身をよじらせて逃げ出そうとしているが、ほぼ間に合っていない。

記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

ギャラリー
  • NESDB、今年の成長率を2.9%に修正
  • 11月29日「父のための自転車」予行演習実施
  • 世論調査:首相の選出
  • タクシンは香港滞在
  • 軍事法廷で裁かれる市民は1629人
  • 映画スタジオGTHが年内で事業終了
  • 映画スタジオGTHが年内で事業終了
  • スラタニー県で500バーツ偽札が出回る
  • クラビ空港前で農民団体と地元住民が一時衝突